研究課題
平成27年度は、受援力・回復力・伝承力の3つの観点によるインター・コミュニティ・デザインの例証のため、東日本大震災を経た上でのグループ・ダイナミックス(集団力学)の観点に基づいた高等教育機関における地域参加型学習による市民教育の推進について、エスノグラフィーの執筆に重点を置いた。特に、(1)概念整理、(2)教育内容、(3)評価基準、(4)事業推進体制、(5)外部機関との協働の枠組み等に迫った。その枠組みについては、「復興に学び・復興を学ぶ:震災PBLを自己目的化しないために」と題し、『臨地の対人援助学:東日本大震災と復興の物語』(晃洋書房)に示した。そこでは、現代的な市民性を培う教養教育としてサービスラーニングという教育手法を展開する上での実践的研究において、問題解決よりも問題探求に力点が置かれることを強調した。その際、シチズンシップ教育の視点から「レジリエンス」の観点に迫った。「回復力」という視点からは「個の強さ」に関心が向くところであるが、冗長性や多様性に着目することにより、グループ・ダイナミックスが流儀とする、匿名性、流動性、利便性、閉鎖性が指摘される現代社会での、学び合い(ピア・ラーニング)の環境創出に関する設計概念を析出した。これらの内容は、日本災害復興学会(於:専修大学)での口頭発表に加え、ニューデリーでの国際総合防災学会において英語でも口頭発表した。特に後者では「Unusefulness(役に立たなさ)」という視点を借りて、意味創出と意志決定とを同時進行で行うことによってもたらされると発表した。
2: おおむね順調に進展している
引き続き、比較的に頻繁に現地を訪問し、当事者との対話を重ねる場を持つことができている。また、海外での発表機会を積極的に得るため、学内の研究助成に応募、必要経費の拡充にもあたっている。一方で、前年度からの課題としていた論文執筆については、夏に投稿した査読付論文が採録決定とならず、改稿を重ねつつ、別の投稿先の検討も進めている。この間蓄積したフィールドワークの成果が公刊され、次の災害の備えにもつながるよう、精力的に発表にあたっていく。
前年度、共同発表者として参加した国際サービスラーニング・地域貢献学会に、筆頭者として応募した。また、共著者であるが英語論文を国際学会に投稿し、査読中である。今後、日本語論文も含めて、当事者と共にあるインター・コミュニティ・デザインの学術的・実践的意義を丁寧に示していくこととする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
ボランティア学研究
巻: 16 ページ: 109-110