研究課題
本年度は、「誤答分析による数学的理解の深化・拡張に関する枠組みの構築」を行うために、①高等学校数学科での実験授業を実施し、②誤答や正答にたどり着けなかった解法を生徒に振り返りさせることによる意義と効果を検証した。①においては、「三角比・正弦定理」の導入場面において、中学校数学「三平方の定理の利用」の学習内容を一般角に拡張するという展開を実験授業として設定した。そこでは、三角形が一意に決定すること、辺や角の存在を確認下にかかわらず、中学校数学科の学習内容では、それらの大きさを「算出できない」ことを生徒たちに意識させる。このようなねらいのもとにどのように授業が展開されたのかを、3つのクラスで動画により記録した。②においては、「正答にたどりつけない」という体験とそれによって顕著になる一般化の必要性が生徒たちに知識の拡張を促すきっかけとなることを、授業記録のプロトコル分析によって検証した。結果として、「誤答を得た」や「正解にたどりつけない」といった授業にみられる学習者の「苦境」は、それまでの知識の深化・拡張に必要であり、そのような授業場面を意図的に設定する意義があるといえる。また、その「苦境」は、「これまで問題解決に用いることが出来た『原理・原則』が、使えない」という状況であり、問題設定によって意図的に引き起こされたものであった。このような授業場面は、算数・数学科授業に必要であると考えられるが、本研究では、特に高等学校数学科の授業に必要であることを強調した。
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第7回東アジア数学教育学会(The 7th ICMI-East Asia Regional Conference on Mathematics Education, 略称:EARCOME)論文集
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第39回国際数学教育心理学会(International Group for the Psychology of Mathematics Education, 略名PME)論文集
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日本数学教育学会誌「数学教育学論究」臨時増刊号
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