本研究課題の目標は、小学生における英語音声面の学習について、理解(知覚)と産出(発話)の能力を習得・向上させるための教材開発と教授法の整備を行うことである。定期的に指導助言や実践支援に携わってきた小学校において収集した学習ログやアンケート調査結果の分析に基づいて検討を進めてきた。教育現場におけるデータ収集を行い、実証的データに基づいて分析を行うことにより、研究成果の現場への還元を考えやすくしていることは意義深い。 小学校での英語活動の授業内外での学習体験の有無を含め、児童の個人的な外国語接触経験のプロフィールを定量的に収集すると同時に、一人1台のコンピュータを用い、各自に割り当てられた固有のIDでログインして英語音声学習を行った学習ログ(Learning Management Systemを備えたComputer-Assisted Language Learning教材を使用)とも照らし合わせて解析した。研究実施に際して3つのサブテーマ(データベース構築、ツール開発、実践支援及び小学生における英語音声能力の発達要因の検討)を設定し、相互に成果を還流しながら改善・開発を進めてきた。 これまでに得られた結果(音声知覚能力の向上に対して、文字への曝露機会の増加と音声的特徴に注意を向けさせた集中的かつ継続的な学習の確保が影響を与えるという可能性)は、もっぱら技能面のテストスコア分析に基づいたものであったが、昨年度末より着手し始めていた質的データ(アンケート調査用紙の自由記述部分)をも加えた分析から、英語学習を通して、スキルの向上、自尊感情の高まり、学習動機の増大にそれぞれ影響する因子が明らかになった。
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