本研究では、まず、ドイツの音楽教育論を検討し、音楽的な感性に基づく音楽作品の理解過程が自己理解、他者理解、世界理解を通して螺旋的に上昇する価値判断の深まりのプロセスであること、またそれが音楽教育の領域を越えた価値観の深まりと自己形成をもたらす対話的なビルドゥングを意味することを明らかにした。また、演奏家への調査を行い、音楽的な感性に基づく思考・判断・表現のプロセスの特徴が、知的論理的な判断のプロセスとは対照的に、身体知と結びついた音楽的感性による理解と判断、およびその判断の総合性、可変性、複雑性にあることを明らかにした。これらの成果に基づき、音楽科の授業開発を行った。
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