研究課題/領域番号 |
26780504
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研究機関 | 敬愛大学 |
研究代表者 |
辻山 洋介 敬愛大学, 国際学部, 講師 (10637440)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数学教育 / 証明の構想 / 振り返り / argumentation / 学習過程 / 議論 / 教科教育学 / 科学教育 |
研究実績の概要 |
証明の構想の立て方を生徒が身に付けられるような学習指導の必要性が指摘されているが,具体的な方策はいまだ明らかではない。この方策の解明を見据えながら,本研究は,証明の構想への取り組みを振り返る活動に焦点を当て,その取り組み方を生徒が身に付けるために必要な学習過程を,議論視点とした考察によって構築することを目的としている。 この目的に対し,26年度は当初,次の考察を行うことを計画していた。一点目は,文献解釈による学習過程の理論的検討であり,二点目は,過去の関連研究の調査データの分析による学習過程の暫定的立案である。この考察を,27・28年度の予備調査・本調査につなげる予定であった。しかし,調査協力者等の事情により,予備調査を26年度に前倒しし,二点目の考察を保留した。結果,26年度は次の考察を行った。 1.学習過程の理論的検討 関連文献を精読し,学習過程を理論的に検討した。その結果,まず,証明の構想の学習の前段階として,説明の構想を位置付けた。そして,説明の構想の学習として,無意識に行った構想を振り返って「どのように考えたからうまくいったのか」を意識する活動と,意識した構想を次の説明問題にいかす活動に着目した。以上のことから,説明の振り返り,説明の構想の振り返り,その構想を活用した別の説明の構成という三つの活動を,説明の構想の学習に暫定的に位置付けた。 2.予備調査の計画及び実施 前述の暫定的な学習過程を実践的に検討するために,中学校第2学年図形領域において予備調査を行った。協力者等の事情により,2時間連続の一斉授業の形をとった。この予備調査を,27年度以降の分析,理論的再検討,本調査の計画,実施,分析につなげていく。このように理論的考察と実践的考察を総合し,いまだ解明されていない証明の構想の振り返りに焦点を当てた学習過程を構築していく点に,本考察の意義を指摘することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した通り,交付申請時の研究実施計画とは順序を変更することになったが,おおむね順調に成果を得られている。暫定的な学習過程の立案において過去の関連研究の調査データの分析をいかすことを,当初は26年度に行う予定であったが,これを十分に行うことができなかった。反対に,当初は27年度に実施予定だった予備調査を,26年度に行った。27年度は,後者に充てるはずだった期間を前者に充てて,過去のデータの分析と予備調査の分析とを併行して行うことにより,大幅な変更はせずに研究を進めていくことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,次の二つの課題に取り組む。第一に,26年度に実施した予備調査のデータを分析し,暫定的な学習過程を検討する。並行して,当初は26年度に分析する予定であった過去の関連研究の調査データを分析し,学習過程の検討にいかす。既に述べたように,当初の計画に比べて時期が前後しただけであり,大きな問題はない。データの分析は,予備調査の授業者や観察者,その他の大学研究者,中学校教師を含む研究協力者の助言を得ながら,多様な視点から行う。 第二に,分析をもとに課題を明らかにして,その課題に関連する研究の知見を総合し,学習過程を修正する。並行して,本調査の計画を行い,協力者の事情等によって本調査の実施時期が変更された場合にも柔軟に対応できるようにしておく。 平成28年度(最終年度)は,次の二つの課題に取り組む。第一に,中学校の一斉授業において本調査を計画し実施する。証明の構想の振り返りには高いメタ認知能力が要求されるため,まずは国立大学附属学校において調査を行うことを予定している。また,本研究は,証明の構想への取り組み方を十分に身に付けていない生徒に対して,それを身に付けられるような学習過程を構築することを目指している。そのため,国立大学附属学校での調査の分析をもとに,公立学校での調査をも行うことを予定している。ただし,協力者の事情や所属学校のカリキュラム等の問題により,順番が前後したり,いずれか一方になったりする可能性があるかもしれない。そのような場合にも,多様な研究協力者の助言を得ながら,計画を柔軟に変更しながら研究を進める。 第二に,本調査の分析によって学習過程の妥当性を検証し,本研究の結論である学習過程を構築する。さらに,教材及び授業の構成に関して,学習指導への示唆を導出する。分析においては,本調査の授業者を含む研究協力者の助言を得ながら,多様な視点から行う。
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