研究課題/領域番号 |
26780506
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
村田 透 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (30469473)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 造形表現 / 意味生成 / 幼児教育 / 保育 / 相互行為分析 / エピソード記述 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼稚園にて造形表現活動を継続的に実践して、異年齢児相互の交流が子どもの身の周りの環境との関係性の構築や意味世界を生成する展開過程と、異年齢交流の経験や学びが日常の遊びに作用する展開過程を明らかにすることを目的としている。研究方法を以下に示す。1.造形教室の実施…富田林市立錦郡幼稚園にて、造形教室を実施(1時間半程度。年間13回実施)。2.子どもの造形行為の記録・分析・考察…子どもの造形行為に保育者(幼稚園教諭、申請者、学生)が周辺的・参与的にかかわるとともに、ビデオやカメラを用いて記録した。各活動後、保育者メンバーでふり返りミーティングを実施するとともにエピソード記述を作成して、記録・分析・考察を行った。 明らかになったことを以下に示す。①子どもは身の周りの環境にかかわり,材料や出来事の固有の意味をつくり,自分のアイデンティティをつくる。②子どもの造形行為は,重要な他者との関係の次元と,外界との関係の次元と,社会文化環境との関係の次元が相互に規定する関係性によって成り立つ。③保育の場における造形表現活動は,上記の3つの次元の関係性を背景にして,子どもの<自分の心>をはぐくむ場となっている。④子どもの造形行為は,多様な特徴(「構成遊び」「模倣遊び」など)がある<いま―ここ>)によって成り立ち,それらが入れ替わり立ち代わり生じる。⑤子どもの表現行為の過程は,表現過程に連続性や発展性が生じる場合もある。 平成27(2015)年度の研究成果を以下に示す。査読付き論文…①「幼児期の子どもの造形表現行為と保育の場に関する研究― 4,5歳児を対象としたパイプを使用した題材から ―」『美術教育学研究』第48号、大学美術教育学会、2016.3。②「「造形遊び」の題材における幼児の造形表現過程に関する研究」『美術教育学』第37号、美術科教育学会、2016.3。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27(2015)年度の研究到達度について、幼稚園と申請者が連携し継続的な造形教室の実践を行い、記録・分析・考察をして成果(2件の論文、2件の学会発表)を発表することができたため、ある程度は達成されている。ただし以下の点が十分に取り組めていないため「やや遅れている」と評価した。1.造形教室での子どもの経験と幼稚園での諸活動との作用・展開過程の分析・考察。2.造形教室での子どもの経験と家庭での生活や遊びとの作用・展開過程の分析・考察。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成26(2014)~28(2016)年度の3年間、申請者と幼稚園が連携して造形教室を実施し、研究目的を明らかにすることを目指している。平成28年度は、前年度までの成果を生かしつつ、研究の効率化を図り、造形教室を継続しながら前年度に十分取り組むことができなかった課題に取り組むこととする。ただし申請者の所属が大阪大谷大学から滋賀大学へと変更したため、前年度までの幼稚園で研究は行えない。研究協力先を開拓することが急務である。
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次年度使用額が生じた理由 |
造形教室等の実践的研究に用いる教材(物品費)について、ある程度まとまった数量で用意する必要があり、まとめて購入したことで予定よりも安く揃えることができたため、残金が生じた。謝金について、研究協力者である学生が授業等の都合により当初の予定通りの人数を確保することができなかったため、謝金の支払いに残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28(2016)年度は、幼稚園での造形教室を実践・記録・分析し、成果を発表する予定である。そのため予算を造形教室の教材や記録機材の購入、学会等に参加するための旅費・会費、研究協力者への謝金に充てるつもりである。前年度の残金に関して、教材費や研究協力者への謝金に充てるものとする。
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備考 |
「教育学部からのお知らせ」の箇所に、幼稚園での造形教室の様子を「アートニュース」として公開。
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