本研究の目的は、幼稚園にて造形表現活動を継続的に実践して、異年齢児相互の交流が子どもの身の周りの環境との関係性の構築や意味世界を生成する展開過程と、異年齢交流の経験や学びが日常の遊びに作用する展開過程を明らかにすることを目的としている。そのために申請者と幼稚園などが連携して、造形表現活動を継続的に実践・記録・分析した。 前年(2016)度までに明らかになったことは以下3点である。①子どもは身の周りの環境と相互作用して自らの表現をつくり、3つの世界(文化的世界、社会的世界、経験・活動的世界)の<意味>を相互に生成する。②子どもの造形表現は、多様な特徴がある<いま―ここ>によって成り立ち、多様な<いま―ここ>の表現が入れ替わり立ち代り生じる。③子どもの表現行為は、多様な特徴がある<いま―ここ>の表現が、次の<いま―ここ>の表現を誘発して、表現過程に連続性や発展性が生じる場合がある。 2017年度は、幼稚園(滋賀大学教育学部附属幼稚園、大津市立石山幼稚園)の他、小学校(滋賀大学教育学部附属小学校)も加えて、造形活動の実践・記録・分析を行った。 それにより、以下2点が新たに明らかとなった。④子どもは「わからない」状態から「わかる」状態にむけて活動し続ける課題探究をして、造形表現(意味世界)の生成過程に連続性や発展性が生じる場合がある。⑤子どもの課題探究による理解は、子ども達固有の文化的価値の受容と創出と、表裏一体となっている。 2017年度の研究成果を以下に示す。【査読付き論文】「子どもの造形表現活動における課題探究について:小学生を対象とした「造形遊び」の題材より」『美術教育学研究』第39号、美術科教育学会、2018.3。【紀要・報告書】「環境(モノ、人、コト)と相互作用して育まれる子供の「探究」と「思考力の芽生え」」滋賀大学教育学部附属幼稚園研究紀要46号、2018.3。
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