発達性ディスレクシアと関係する視空間ワーキングメモリ(WM)と視覚注意(VA)の訓練効果を,健常成人を対象に検討した。WM訓練によってWMの成績は向上した一方,VAスパン訓練によってVAスパンは改善しなかった。訓練前後の選択的注意課題遂行中の脳波では,標的刺激呈示後200ms付近で惹起するP200成分がWM群で振幅が増大した。この結果は先行研究と一致しており,記憶における初期選択的注意が改善したと考えられる。VAスパンよりWM訓練の方が効果的である可能性が示唆された。視空間機能に弱さを持つ児童に対してもWM訓練はある程度の効果が見られた。WM訓練の実施には訓練の限界を踏まえることが必要である。
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