研究課題
残存聴力を持つ感音性難聴の聴覚障害者を対象に,音楽トレーニングにより認知的な音楽聴取能力がどのように向上するか,その学習効果を明らかにすることを目指す.声,音楽,環境音などが実在する実生活において,場の雰囲気の把握や危険予測など会話以外の音でのコミュニケーションを可能にし,聴覚障害者のQOLを向上させることを期待する.トレーニングは音楽ゲームによって実施され,積極的,継続的,娯楽的な使用を通して音聴取の基礎的能力向上を目指す.平成27年度は平成26年度から継続して行っていた音の時間変化や反復に注意するリズムの識別能力を高めることを目的とした音楽トレーニングシステムの短期的学習効果に関する対外発表を行い,長期的学習効果について実験を開始した.学習者は音楽に合わせてタッピングをするが,視覚手がかりを参考にどのタイミングで拍を取れば良いかを学習するものである.また,平成27年度では予定していたもう一つの聴取能力である楽器音識別能力の音楽トレーニングシステムの構築および効果検証の実験を行った.音色の振幅時間エンベロープに関する知識の獲得により楽器音の識別率が向上するか検討し,一部の楽器において識別率の向上が確認された.当該システムの短期的な学習効果について対外発表を行った.
2: おおむね順調に進展している
全体で計画していた2つのトレーニングの両方に関する短期的学習効果に関する検討を終えた.効果の見込めるリズム識別能力トレーニングシステムに関して長期的学習効果に関する実験を開始している.
楽器音識別による音色の聴取能力のトレーニングに関しては短期的学習効果に個人差があることなどから,認知的聴取段階による検討や音響学的な検討を行うこととする.その際,音のバリエーションが広い環境音を用いる.すでに予備実験は開始しており,音色識別に関する調査方法を確立しているところである.
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情報処理学会論文誌
巻: 57-5 ページ: 1331-1340