小学校の通常学級には学習に特異的な困難さのある児童が4.5%存在する。申請者は,読み書きに困難さのある児童生徒の中にはしばしば聴力には問題がないにもかかわらず雑音下での聞き取りに困難があり、それがボトルネックとなって読み書きの習得を阻害している事例を経験している。本研究ではこういった事例を“聞き障害”とする。この聞き障害児童生徒への適切な支援の第一歩として、通常学級に在籍する聞き障害児童の実態を把握することを目的に,研究を行った。 小学校1年生から6年生の児童を対象に自身の聞きとりやすさに関する質問紙調査(聞き障害チェックリスト)と読み書きの流暢性に関する調査を実施し,聞こえの困難さと読み書きの困難さの関連を検討した。その結果,聞きとりやすさの認識は個人間でのばらつきが大きく,質問紙でその困難を捉えることが難しいことが明らかとなった。この結果は,International Congress of Psychology 2016においてポスター発表を行った。 また,聴覚過敏およびスピーチへの選択的注意の分配が難しい大学生に対して,アクティブノイズコントロール(ANC)技術としてのノイズキャンセリングヘッドフォンの適応およびFM補聴器の適用を2週間行い,その効果をモニタリングした。大学という多くの教員が関わる状況においてANC技術とFM補聴器に関する共通理解を得ることが必要であるなど,導入のためにはいくつかのステップが必要なことが明らかとなった。効果としては,授業に参加しやすくなったとの主観的効果やノートテイクの量が増えるといった定量的な効果が得られた。この結果は,日本騒音制御工学会春季研究発表会で報告し,騒音制御40(6)にまとめている。
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