研究課題/領域番号 |
26780518
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松島 佳苗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60711538)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発達障がい時 / 感覚処理 / 質問紙 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害児を中心とした発達障がい児の多くは、感覚処理に関連する行動の問題(過剰反応や低反応など)を、日常生活で示すことが知られている。Sensory processing measure(以下、SPM)は、感覚処理に加え、社会参加や行為機能といった、発達障がい児が生活環境で困難をかかえやすい行動上の特性を評価するために米国で開発された国際的な質問紙である。日本でもSPMが活用できるようになれば、発達障がい児の感覚処理に対する支援の発展と内容の充実につながることが期待される。本研究では、日本版SPMの信頼性・妥当性を検証し、国内で標準化を行うことを目的としている。 平成26,27年度では、文化社会的背景を考慮する上で、SPMの各質問項目に関して複数の専門家による内容的妥当性の検証を行い、プレテストを含めた逆翻訳の手続きを行った。日本版SPMを完成させる際には、原版の開発元であるWestern Psychological Service(WPS) による検証を受け承認を得ている。平成27年度後半からは、国内の定型発達児・発達障がい児のデータを収集を開始し、国際比較による検証を進めている。現時点では、各群ともに約30~40名のデータ回収状況であり、予定しているサンプル数には至っていない。しかし、日本の定型発達児に関しては、米国の標準化サンプルに比べ、感覚処理に関連する行動特性を示す頻度が少ない傾向が明らかとなっている。そのため、SPMの粗点から得られる結果を解釈していくためには、日本独自のT-scoreの算出が必要である。平成28年度も引き続き、国内の定型発達児ならびに発達障がい児のデータを収集することにより、国内での日本版SPMの標準化を目指して取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SPMは家庭用と学校用があり、家庭環境での様子を保護者が記入し、学校環境や園の環境での様子を教員が記入することで、異なる環境における子どもの状態を包括的に理解することができる。そのため、一人の対象児に関して、保護者と教員の両者が同時期にSPMの質問項目に回答することが必要であり、家庭と学校・園の協力が不可欠である。 しかし、平成27年度に予定していた一部の研究協力機関(地域の小学校)から、機関の事情により研究協力が得られなかった。そのため、当初予定していたサンプル数には至っていない。国内での標準化を行うためには、信頼性・妥当性を検証するための十分なサンプル数が必要であり、今後、新たな研究協力機関に依頼をしていく必要ある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、現時点での研究成果を学会等で報告を行い、質問紙の内容・意義等を全国的に広く広報をすることで、大規模調整を進めていく上での研究協力機関を増やしていく予定である。また、便宜的サンプリングではあるが、研究責任者・研究協力者の知人を中心に学校・教育関係者への広報を行いながら、サンプル数を増やすことを予定している。年度内に、当初の目標とするサンプル数のデータを収集し、日本版SPMの信頼性・妥当性の検証を行う。また、感覚刺激に対する自律神経反応など生理的な指標との関連や介入効果の検証に使用する上での妥当性に関しても発展的・応用的に検証を進める。 年度内には、本研究の成果の一部を国際誌(American Journal of Occupational Therapy等)への投稿することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、予定していた研究協力機関での調査が困難となったため、大規模調査とそのデータ解析にはいたっていない。平成28年度には、新たな研究機関に依頼を行い、十分なサンプル数のデータを収集する予定である。そのため、データ収集ならびに解析のために予定していた人件費等が次年度使用額として繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度内にいくつかの新たな研究協力機関の候補をあげ、依頼をする段階にいたっている。今後は、各機関との交渉・調整を行いながら、必要なデータ数の収集を試みる。 さらに、学会・研究会での発表を通して、SPMの開発意義やその内容に関する広報活動も積極的に進めていく予定である。
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