本年度に実施した研究の内容としては,1)定型発達児を対象とした相互交渉場面の分析と,2)先行研究の整理である。
1)本年度は保育所にて2~3歳の定型発達児(11名)を対象とした相互交渉場面の観察を実施し,分析を行った。分析の結果から,保育者との相互交渉場面では,定型発達児がかなり高い頻度で保育者のはたらきかけを「受容」していること,さらにはたらきかけ方の分析から,言語やジェスチャーを用いたはたらきかけと,おもちゃの操作の例示が伴うはたらきかけが有意に多いことが明らかとなった。また,はたらきかけが持つ機能を「維持(現在の相互交渉をそのまま続ける)」「発展(現在の相互交渉をベースに新な要素を加える)」「転換(現在の相互交渉とは無関係なものを用いる)」の3つに分類して分析したところ,2~3歳の定型発達児との相互交渉においても,保育者は「維持」に該当する機能をもつはたらきかけを行うことが有意に多いことが明らかとなった。次に,相互交渉の連続回数に着目した分析から,平均回数よりも長く継続する相互交渉には,「維持」に該当するはたらきかけが,他の2つのはたらきかけよりも,有意に多く含まれることが明らかとなった。 以上のことから,定型発達児との相互交渉で,保育者が用いるはたらきかけかたの特徴と,2~3歳児の定型発達児との相互交渉を継続させるはたらきかけ方の一端が明らかとなった。
2)自閉症幼児の相互交渉場面における障害特性や,指さし理解・産出(共同注意スキル)に関する文献に加え,定型発達児の相互交渉スキルについて,海外での最新研究を中心に整理した。
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