研究課題/領域番号 |
26780523
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
井上 知洋 聖学院大学, 人間福祉学部, 助教 (30635016)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 読み書き発達 / 正書法 / かな文字 / 漢字 / 縦断的検討 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,①縦断的検討により,日本語のかなと漢字の読み書き発達における認知的要因および非認知的要因の役割を明らかにすること,②読み書き発達のプロセスの国際比較により,異なる言語において適用できる普遍的かつ包括的な読み書き発達のモデルを構築することである。平成26年度は,本研究のために開発された一連の尺度群を用いて,縦断的検討の1回目の調査を5月から6月の期間に,2回目の調査を11月から12月の期間に実施した。調査参加者は,平成26年度に小学校に入学した1年生の児童170名であった。現在までの結果の分析から,かなの読みの正確さの発達においては音韻意識(言語音の認識・操作)と正書法知識(正しい書き方に関する知識)が重要であること,また,かなの読みの速さとかなの書きの発達においては音韻意識と正書法知識に加えて呼称速度(ものの名前を言う速さ)が重要であることが明らかとなった。今回の結果におけるかなの読み書き発達の認知的規定因のパターンは,先行研究における英語のパターンに類似した。英語は,文字と音の対応関係の一貫性が極めて低いとされる言語である。本研究の参加者における読み書き課題の得点の分散が主に特殊音(拗音,促音等)によるものであったことを考慮すると,特殊音を含むかなの読み書き発達の認知的規定因は,一貫性が低い言語の規定因に近いものであると推測された。すなわち本研究のこれまでの結果は,従来非常に容易と考えられてきたかなの読み書きの習得が,少なくとも小学校入学当初の児童においては,英語のような不規則な対応関係を学ぶ状況に類似することを示唆するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
縦断的検討の初年度となる平成26年度は,当初の予定どおりに2回の本調査を実施することができた。また,国内の複数の地域における調査実施協力者との間において,次年度以降継続して実施する予定の調査に向けて協力体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では縦断的検討を行うため,調査の回を重ねるごとに辞退者が出ることが想定されていた。これに関して,平成26年度に実施した初回調査の時点において参加者の数が当初の予定に達しなかったものの,2回目の調査の時点で辞退者がほとんどいなかった。このことから,同様のペースで進行した場合,調査終了時点においては予定の参加者数を確保できることが見込まれる。そのための具体的方策として,調査実施協力者との間で緊密な連携をとること,参加者ならびに実施協力校に対して調査の経過に関するフィードバックを行うことなどを予定している。
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