研究課題
平成28年度は,本研究における縦断的検討の5回目の調査を5月から6月の期間に,国内の複数の地域における調査協力者の協力を得て実施した。調査参加者は,平成26年度から本研究に参加しており,本年度の参加継続の同意が得られた3年生の児童63名であった。現在までに得られたデータの分析から,英語などのアルファベット語や中国語での先行研究において示されてきた,形態素意識(語の成り立ちに関する認識・操作)の読み書き発達における役割が日本語のかなと漢字においても確認された。具体的には,形態素意識の読み発達に対する寄与の程度の比較から,かなの読みに対しては発達に伴い相対的に形態素意識による寄与の程度が低くなり,対照的に漢字の読みの習得に対しては発達に伴い寄与の程度が高まることを示した。加えて,家庭の読み書き環境に関するデータの分析から,児童の読み書きの習得状況に応じて保護者が家庭での読み書き活動の頻度を調整していることを明らかにした。この知見は,すなわち子どもの読み書きの習得が良好であれば保護者が関与の程度を減らし,反対に読み書きの習得が思わしくなければ関与の程度を増やすことを意味するものと解釈できる。以上より,本研究のこれまでの成果は,かなと漢字の読み書き発達の基盤となる認知機能の解明に寄与するとともに,子どもの読み書きの習得状況から家庭の読み書き活動への影響を示す国内で初めての知見として意義づけられた。
2: おおむね順調に進展している
縦断的検討の3年目となる平成28年度は,当初の計画どおり年度当初に5回目の本調査を実施することができ,計画していた計5回の調査を完了することができた。また,現在までに得られたデータの分析結果を国際学会にて発表し,加えて国際学術誌に投稿した論文が2報掲載された。
本研究の最終年度となる平成29年度は,3年間の追跡調査から得られたデータの分析,学術論文の執筆と国際学術誌への投稿,国内外の学術集会での成果発表,ならびに調査参加者である児童らの所属学校の教員等を対象としたフィードバックが主な活動内容となる。特に教員等へのフィードバックにおいては,本研究の調査に協力した国内の調査協力者と連携し,主に校内研修会等の場面において,調査結果から得られる教育実践への示唆について議論する機会を設けることを計画している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Reading and Writing
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s11145-017-9726-4
Journal of Research in Reading
10.1111/1467-9817.12109
LD研究
巻: 25 ページ: 503-510