研究課題
平成29年度は,前年度までに実施した計5回の縦断調査から得られたデータの分析と,その結果にもとづく成果発表(論文執筆,学会発表)を中心に行った。これらに加え,当初の研究実施計画に従い,カナダ(英語)およびギリシャ(ギリシャ語)の両国で並行して行われた同様の縦断調査のデータとの間で言語間比較を行った。まず日本語話者の児童における結果から,特にひらがなの単語と非単語の読みの流暢さにおける就学後2年間の発達軌跡の様相が明らかとなった。単語の読みでは就学後2年間をとおして比較的大きな個人差が見られ,非単語の読みでは当該の期間において個人差がむしろ拡大していたことから,就学時の読み能力のアセスメント(およびその後の継続的な評価)をとおして持続的な読み困難の兆候を早期に見出せることが示唆された。次に言語間比較の結果から,英語話者とギリシャ語話者の児童においては読み書き能力と動機づけや自己評価の間にポジティブな相互作用が見られたが,日本語話者の児童の漢字習得においてはそのような関係は必ずしも明確でなく,むしろ漢字の読み書き能力によらず全体の傾向として自己評価が低下することが示唆された。これらの結果は,それぞれの言語における習得の難しさの違い(すなわち漢字の習得が英語やギリシャ語の習得よりも相対的に難しいこと)を反映している可能性がある一方で,各国における読み書きの指導方法の違い,あるいは学習成果のフィードバック方法の違いなどを反映する可能性も考えられ,これらについてさらなる検討が必要と思われた。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Scientific Studies of Reading
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/10888438.2018.1435663
巻: 21 ページ: 449~462
10.1080/10888438.2017.1323906