本研究では、発達性ディスレクシア(DD)のリスク児における病態解明と、神経生物学的エビデンスに基づく早期支援の提案を主目的とする。本年度は、DDに対する教育的支援の実施と、支援効果の神経生物学的検証、病態に関わる認知機能についての解明を行った。成果としては、①新規の指導法を用いたDD患児への指導で読み成績を向上させることができた②読み成績の改善に伴う脳機能の変化を明らかにした③視空間ワーキングメモリーに関わる前頭葉の脳賦活の発達過程とその異常を明らかにした。これらの知見は、本邦における先行研究と合わせてDDの病態解明の一助となるだけでなく、神経生物学的エビデンスに基づいた指導法として先駆的なものと位置づけられる。研究期間を通して、複数の研究機関との協力体制を築くことができたことが、円滑な調査や実験実績に繋がったと思われる。当初の想定をこえた研究実績が得られたことをふまえ、今後はDDの早期発見・早期支援システムの社会実装と国際比較研究につなげていくことが期待される。
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