研究実績の概要 |
当グループではこれまで、表面に均一な負電荷を有する無機層状化合物である粘土鉱物のナノシート (ホスト)と、カチオン性色素(ゲスト)からなる有機-無機複合体に着目しており、これまでの検討により、中性の有機分子を内包したカチオン性カプセル型分子の高密度配列に成功している。また、本研究課題の初年度、二年度目の成果として、カプセル分子内に内容された中性分子と外部の中性もしくはカチオン性分子間での高効率な光ネエルギー移動、光電子移動を達成しており、新しい人工光合成モデルの提案に成功している。 本年度は、分子カプセル内に燐光色素として有名な4,4'-ジメチルベンジルを内包し、さらに粘土ナノシート層間にインターカレーションさせることで、カプセルの開閉に伴う酸素による燐光消光挙動を能動的に制御することに成功した。具体的には、様々な酸素濃度に調整した水溶液中で分子カプセルとナノシートの複合体を調整し、定常発光、時間分解発光測定を行うことで、スターンーボルマー解析を行った。その結果、分子カプセルが水溶液中に単独で存在するときの酸素による燐光消光速度定数は4.7 × 107 (s-1 M-1)だったのに対し、ナノシート層間に閉じ込められた分子カプセルにおいては5.4 × 105 (s-1 M-1)となり、2桁減少した。この結果は、水溶液中では容易に起きるカプセルの開閉を、ナノシート層間の物理的に制約のある空間に閉じ込めることによって達成された。
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