研究実績の概要 |
本研究では、界面を用いて、マクロな力学刺激と1分子の構造変化の関係を定量化し、その知見を用いて、力学刺激による単分子のキラリティー制御を行うことを目的とした。具体的には、気-液界面に、1,1’-ビ-2-ナフトール(BINOL)誘導体の単分子膜(Langmuir膜)を形成させ、単分子膜の圧縮による、分子内の二面角の変化を定式化を行った。次に、キラリティーを持たないビナフチル誘導体を用いて、わずかな量のキラル源を加え、圧縮により各分子の軸不斉を誘起し、キラル情報を増幅させることを目指した。このように、マクロとナノを結びつける研究に焦点を当てることで、分子マシンの動作原理などの、ナノサイエンスの基礎原理を導くことを最終的な目的とした。 平成27年度は、不斉を有するBINOL誘導体の単分子膜を圧縮することで、分子内の二面角が閉じ、CDスペクトルが変化することを発見した。圧力と分子の占有面積のプロット(πーA曲線)から、開閉に必要なエネルギーを見積もることができた。共同研究先とともに、界面における分子シミュレーションを行い、CDスペクトルと開閉のエネルギーの関係について、理論的裏付けも得た。 当初の目的の本質的な部分を明らかにできたため、より前進的な研究対象としてDNAナノ構造体を用い、気-水界面上にその単分子膜を形成させ、圧縮-拡張の力学的刺激による構造体誘起を行った。その結果、圧縮-拡張の刺激サイクルを増やすごとに、DNAナノ構造体の超分子集合が誘起されることが明らかとなった。
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