研究課題/領域番号 |
26790005
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
フロランス アントワーヌ 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (30628821)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シリセン / 走査トンネル顕微鏡 / 二次元材料 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、Siウェハー上に成長した二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)薄膜の表面にエピタキシャルシリセンが自発的に形成される現象について調べるために、Arイオンスパッタリングにより得られた清浄ZrB2(0001)面へのSi層の成長過程を調べることを試みた。超高真空チャンバーに導入したての、酸化物に覆われたZrB2薄膜と、加熱して酸化物を除去した結果シリセンに覆われたZrB2薄膜の両方に加速エネルギーと時間とを系統的に変化させてスパッタリングを施した結果、後者の試料の方が平坦なZrB2(0001)面を得ることが容易であることが分かった。200eVの加速エネルギーを用いて二、三秒のスパッタリングを行えば、シリセンをZrB2(0001)面の平坦性を損なうことなく除去できることが低速電子線回折などにより明らかとなった。この表面を用いて、表面偏析と拡散によりシリセンが成長する様子を調べた。部分的にスパッタした結果、シリセンが表面積の半分ほど除かれた試料においては、400℃の加熱により再構成したシリセンによる島状構造が再形成された。基板から表面へのSiの偏析は640℃付近で起きることが明らかとなった。この実験を通して以下のことが結論できる。スパッタリングを施した表面はもとの薄膜表面と比べると凹凸が大きく、粗くなったが、シリセンはその粗い表面上にも形成され、平坦性がシリセン形成の必要条件ではない。また、島状のシリセンやシリセンシートはドメイン構造を持つが、750℃の加熱によりはじめて縞状の揃ったドメイン構造が生じた。このことは、縞状のドメイン構造がシリセンをZrB2(0001)面上に安定化させるために必ずしも必要ではないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
清浄なZrB2(0001)面を得るためのスパッタリング条件を最適化できたことはこのプロジェクトの成功のために必要な大きな成果である。また、部分的に表面のSiを除去した状態でSiが拡散する温度やSiが偏析する温度において行った加熱実験により、平坦性やドメイン構造がシリセンの形成に不可欠だというわけではないという有用な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にスパッタリング条件を最適化することによって得られた清浄ZrB2(0001)面のSiの蒸着によるシリセンの形成条件を明らかにすることを試みる。Si源は既に装置に設置済みであり、Siのフラックスの校正も済んでいる。蒸着は、基板温度と蒸着量を系統的に変えて行う予定である。さらに、ZrB2(0001)面を原子状水素により水素化し、改変した基板表面上における水素が除去されない温度範囲でのSiの蒸着によるシリセンの形成を試みる。また水素がシリセンとZrB2(0001)面の間に存在することによってシリセンと基板との相互作用の強さが変わり、電子状態に変化が起きるかどうかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にイタリア・ナポリ(Superstripes2015-International Conference)と、アメリカ合衆国・オーランド(The 5th International Meeting on Silicene)で開催される国際学会に招待されたため、平成26年度分の成果発表を平成27年度に合わせて行うことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
エピタキシャルシリセンの形成機構に関する成果発表のため、平成27年度開催の二つの国際学会への旅費と参加費に充てる。
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