研究課題
平成27年度は、Siウェハー上に成長した二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)薄膜の表面にエピタキシャルシリセンが自発的に形成される現象についてさらに調べるため、このシリセンに特徴的な縞状ドメイン構造に着目して研究を進めた。その結果、縞状ドメイン構造のない「単一ドメイン」シリセンシートを形成に成功し、縞状ドメイン構造はZrB2上でシリセンを安定化するために必須な構造ではないことが明らかになった。縞状ドメイン構造を持つ自発形成されたZrB2上シリセンを300℃程度に加熱し、蒸着によりSi原子を一原子層分の一割にも満たない微少な量加えることでドメイン構造が消失した。電子状態をドメイン構造消失前後で測定し、比較すると、ドメイン構造の消失により同一の電子状態がより鮮明に測定されることが分かり、シリセンの座屈構造や再構成構造そのものは影響を受けずに単一ドメインシートが形成できることが明らかとなった。ただ、この余剰のSi原子は加熱により除去できることから、Si原子の量が増えても縞状構造を持つシリセンが最も安定な状態であることに変わりはない。この成果は投稿論文にまとめられ、Applied Physics Letters誌に掲載決定された。また、温度可変走査トンネル顕微鏡を使用して自発形成シリセンの構造の温度依存性を調べた。その結果、縞状ドメイン境界に垂直な方向の格子定数は温度上昇とともに長くなることが見出された。原子分解能像の解析から、温度の上昇とともに座屈構造の変化とドメイン構造の消失を伴う相転移が起きることが分かり、さらなる温度の上昇により単一ドメインシートの融解が観察され、一次相転移であることが明らかとなった。以上、シリセンの形成機構を明らかにする上で重要な知見が得られた。
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Applied Physics Letters
巻: 108 ページ: 1519021 1519025
http://dx.doi.org/10.1063/1.4945370