研究課題/領域番号 |
26790009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 祥一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20514863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ネマチック液晶 / ナノ材料 / 高分子合成 |
研究実績の概要 |
ネマチック液晶高分子に基づく構造形成、および、その動的制御を実現するため、側鎖メソゲンに対して低分子液晶や機能性分子が効果的に相互作用し、メソゲンの配向を柔軟に制御しうる材料を設計する必要がある。この観点から、ネマチック液晶高分子と低分子との相互作用を中心に、材料設計および合成を進めた。 機能性分子の側鎖メソゲンへの相互作用および高次構造形成を示す指標として、キラル分子によるキラルネマチック液晶相形成を検討した。フェニルベンゾエート部位をメソゲンとして有するメタクリレートモノマーから、原子移動ラジカル重合法により単峰性ネマチック液晶高分子を合成した。キラル分子として、S-811およびISO-(6OAB)2を用い、ネマチック液晶高分子との親和性および液晶性への影響を調べた。示差走査熱量測定、偏光顕微鏡観察などの結果から、いずれのキラル分子もネマチック液晶高分子に相溶すること、らせん誘起力の大きいISO-(6OAB)2を添加した場合にキラルネマチック相が形成されることを見出した。 さらに、ネマチック液晶高分子の側鎖に、非液晶性の側鎖をランダムに導入することで、機能性分子のメソゲンへの相互作用を促す材料設計を行った。フェニル基またはアルキル鎖を導入したネマチック液晶性ランダム共重合体を合成し、非液晶性側鎖がキラル分子との親和性に与える影響を調べた。アルキル鎖の導入した場合に、キラル分子のアルキル鎖との相互作用により親和性が向上することを見出した。 また、無機ナノロッドへのネマチック液晶高分子のグラフト密度、および、配向形成を補助する最適な低分子ネマチック液晶を明らかにするため、液晶相転移温度や分子構造の観点から低分子ネマチック液晶の選定を行い、分子協調的相互作用の有無などについての基礎的知見を得た。ネマチック液晶高分子に基づくナノ構造の制御性を高める分子設計の点で重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネマチック液晶高分子により形成されるナノ構造を柔軟に制御すること、さらに、この制御性を向上させることが本研究課題の基礎となる。機能性部位の導入によるメソゲンの配向性の制御を促進するという材料設計の方針に基づき、無機ナノロッドにグラフトする密度の制御のみではなく、ネマチック液晶高分子の側鎖を間引いたランダム共重合体を用いることが有用であることを見出した。また、低分子液晶の分子構造や液晶温度範囲の観点から材料の選定を進めるに至っている。ナノロッドの配向構造を自在に制御する基礎的知見を蓄積しており、研究の進展はおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ネマチック液晶性メソゲンに機能性分子をアクセスさせる高分子材料設計や、構造形成を促進する低分子液晶に関して得た知見に基づき、今後は、半導体ナノロッドの配向形成メカニズムの解明へフィードバックすることで、精密なナノロッド配向を実現する材料の最適化を行う。また、光配向制御を実現するため、これまでの知見で得た液晶高分子の側鎖に光り反応性部位を導入し、直線偏光照射によるメソゲンの光配向現象を確立し、これをナノロッドにグラフトすることで、光応答性の検討を進める。最終的に多様なナノロッドの配向制御およびデバイス構築を達成するため、ナノロッドや電極端子などの適切な配置についての議論を並行して進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
液晶高分子のモノマー合成のスキームをほぼ確立したこと、一部の機能性分子については他の研究室の協力により提供を受けられたことなどから、材料合成に要する試薬購入費が低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
光反応性分子の合成、物性評価に要する試料調製に関わる費用の増加、および、分子設計などに関する協力研究者との打ち合わせの増加が見込まれ、物品費および旅費が当初計画よりも必要となり、次年度使用額と併せて使用する。
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