研究課題/領域番号 |
26790009
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
久保 祥一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (20514863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ネマチック液晶 / ナノ材料 / 高分子合成 |
研究実績の概要 |
動的ハイブリッド材料の基礎となる、ネマチック液晶高分子の光配向運動を検討した。本研究の主材料であるネマチック液晶高分子PMA(4OPB)の側鎖メソゲンはフェニルベンゾエート基であるが、この官能基は光Fries転位を起こすことが報告されている。これに着目し、高分子薄膜内でも紫外光照射による光Fries転位、および、これに起因したメソゲンの光配向が生じるかどうかを調べた。 膜厚約30nmのPMA(4OPB)薄膜を調製し、紫外光の照射による光化学反応の進行を調べたところ、Fries転位に由来する吸収スペクトル変化が確認され、サブ100nmの薄膜内でもバルク状態と同様に光Fries転位が進行することが分かった。薄膜に直線偏光紫外光を照射し、その後アニール処理を施すことによる、メソゲンの配向状態の変化を追跡した。照射エネルギー、アニール温度、アニール時間の各パラメータを調節し、入射光の偏光軸と直交する方向にメソゲンが配向する形で光配向が誘起されることが分かった。膜厚約100nmの薄膜と比較したところ、膜厚30nmの薄膜の方が配向度が低く、配向に要する時間が長い傾向にあった。基板界面および空気界面によるメソゲン運動の束縛の影響を受けていることが示唆された。 薄膜状態における運動性を向上させる必要が示されたため、低分子液晶との複合化を図った。示差走査熱量測定による相溶性の評価から低分子液晶材料の選定を進め、光配向挙動への影響を調べたところ、配向に要する時間が短時間化することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド材料に動的運動性を与える基礎として、本研究の主材料である液晶メソゲンのサブ100nm薄膜における光配向を実現するとともに、膜厚依存性から薄膜特有の運動性についての知見を得た。動的ハイブリッド材料を実現するのに重要な知見を得たものであり、研究の進展はおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
桂皮酸誘導体など、より効率的な配向運動および架橋による材料固定を可能とする材料の導入について、研究連携者との連携を強める。得られたネマチック液晶高分子をナノロッドにグラフトし、ハイブリッド材料の動的運動の実現につなげる。また半導体に限らずプラズモニクス材料などからなるナノロッド材料への展開可能性について学会活動などで議論し、多様な材料への展開可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究連携者との打ち合わせを、学会期間と併せること等により旅費経費が見込みより低く抑えられた。また、光反応性分子として従来用いていた分子を適用して汎用的な材料とできたことによる材料費が低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
ハイブリッド材料としての配向度の高い材料設計・合成を進めるための合成試薬購入費として、次年度計画額と併せて使用する。
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