研究課題/領域番号 |
26790010
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
木下 幸則 秋田大学, ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 助教 (10635501)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気記録ヘッド / 高周波磁場 / 磁気力顕微鏡 / 周波数変換 |
研究実績の概要 |
本研究は、磁気力顕微鏡を用いて、微小な磁性体から発生するギガHz帯の高周波の磁場を、ナノメートルの空間分解能で、垂直方向と面内方向の二成分をそれぞれ独立に検出(ベクトル検出)し可視化する技術を開発する事を目的としている。高周波磁場を低周波で変調した時に生じる、探針振動の周波数変調を検出する手法をベースに、磁気イメージングでアーティファクトの生じにくい常磁性合金を新規に探針材料として用いて、実現を図る。今年度は、ハードディスクドライブ用の磁気記録ヘッドを標準試料として、その高周波の記録磁場を観察するための準備を行い、以下の成果を得た。 1, 磁気力顕微鏡を用いた高周波磁場計測の定式化 本研究でベースとなる探針振動の周波数変調を用いる交流磁場検出の理論に、高周波磁場を受ける磁性探針の磁化挙動を組み込み、高周波磁場検出の理論を定式化した。 2, 高周波磁場計測用の試料ステージの構築 磁気記録ヘッドから発生する高周波磁場をナノスケールの分解能で観測するには、ヘッド駆動用の高周波電流を効率良く伝え、同軸ケーブル等の高周波部品からの振動の伝播を押さえる必要がある。そこで、高周波の伝送路を解析して伝播ロスを最小化したのち、振動絶縁性の高い構造の試料ステージを作製し、現有の磁気力顕微鏡装置に取り付けた。 3, 高周波アンテナの作製 探針の磁化を励磁するための高周波磁場アンテナを設計・作製した。アンテナは特定の方向に、磁場のみの照射が可能な機構を実現した。 4, 常磁性合金探針の作製 現有の強磁性探針では、磁気ヘッドからの強い磁場による探針の磁化反転やヒステリシス応答により磁気像にアーティファクトが混入する。そこで、磁気飽和が無く、磁場に対する線形応答性に優れたFe系の常磁性合金の組成を割り出した。これをスパッタリング法でシリコン探針に成膜し、電磁石から発生する数100Hz程度の低周波磁場の検出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、計画していた研究項目(1.磁気力顕微鏡を用いた高周波磁場計測の定式化、2. 高周波磁場計測用の試料ステージの構築、3.高周波磁場計測用の試料ステージの作製、4.常磁性合金探針の作製)を推進し、それぞれ、おおむね良好な成果が得られているため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
以下の課題について研究を推進する。 1、高周波磁気力顕微鏡の計測系の改良・調整 まず磁気記録ヘッドを観察試料として、表面凹凸像に含まれるノイズを計測し、高周波電流印加機構やアンテナの設置による振動の影響を調べる。ノイズが大きい場合は固定機構を強化する。次に、低い周波数(<100MHz)の交流磁場に対して、本研究で提案する周波数変換法を実証する。また、探針振動の周波数変調強度と磁気像の空間スペクトルから、本手法の感度と空間分解能を、従来の交流磁場計測法と比較する。ギガHzまで磁場周波数を徐々に上げ、感度が不足する周波数で、再度、高周波の伝送線路のマッチングと磁場アンテナの調整を行い、装置調整を完了する。 2、常磁性探針を用いた高周波磁場のベクトル検出の実証と高周波磁性材料への応用 前年度に開発した常磁性探針を用いて、磁気記録ヘッドや磁性ナノ微粒子等の高周波で用いる機能性磁性材料に対して、ギガHz帯の高周波磁場のベクトル成分マッピングが可能な事を実証する。発生磁場が弱いと予想される磁性ナノ微粒子に対して、感度が不足する場合は、前年度作製した常磁性合金の組成を更に調整した、磁化率の高い磁性探針を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規に作製する予定であった磁場アンテナの作製を、所有の高周波部品を用いて作製できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用分は、さらに高出力な磁場アンテナの材料費と加工費、およびそれを磁気力顕微鏡に組み込むための固定ジグの作製費に充てる。
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