研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き、実用の磁気記録ヘッドの高周波磁場イメージング観察に向けた高周波磁気力顕微鏡の更なる改良を行った。具体的には以下の項目を実施した。 1, 周波数変換検出法による高周波磁場イメージングの高速化 本研究では、試料が発生する高周波(~GHz)の磁場を探針の機械的振動で検出するために、試料磁場を低い周波数(数10Hz)で変調し、磁場と探針磁化との相互作用力に現れる差周波(数10Hz)の項を探針振動からロックイン検波している。しかし、この低周波変調方式では、十分な解像度の磁気像を得るための撮像時間(スキャン速度)が、1フレーム当たり10分弱であり、数10nm程度のギャップ(磁場の極性が変わる領域)幅しかない磁気記録ヘッドを試料とした場合には、熱ドリフトの影響により、磁気像の歪が生じ、試料磁場分布の正確な評価が困難となる事が判明した。そこで、数100kHzからサブMHzの周波数でも高周波磁場の周波数変換検出が可能な新たな方式を考案し、1フレーム数分程度の撮像を実現した。 2, 常磁性合金膜の感度調整 本研究では、常磁性合金を探針被覆材料に用いるが、近年の先端的な磁気記録ヘッドから発生する磁場は非常に強い(数kOe以上)。それらの磁場を観察対象とした場合、合金磁化の磁場応答(磁化曲線)に非線形性が現れ、検出信号が磁場に比例しなくなり、磁気像の解釈が困難となる。そこで、弱磁場領域でも感度が足りる程度に探針磁化を少し低下させつつ、磁場応答の変曲点が高磁場側になるように常磁性合金の組成を調整した。これにより、磁場の強弱に寄らず、信号強度は磁場に比例するため、磁気像の解釈が容易になった。
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