研究課題/領域番号 |
26790014
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
野々口 斐之 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50610656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 熱電変換 / 超分子化学 / 有機エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本申請課題の目的は分子間間相互作用を介した分子集積化により、大気下で駆動できるn型単層カーボンナノチューブ材料を得るとともに、その学理構築に貢献することである。平成27年度は分子複合化によるカーボンナノチューブ熱電材料の高性能化を検討した。 1.層状遷移金属カルコゲナイドの剥離コロイドが自発的にCNTに吸着することを見出した。このことがp軌道-π軌道の相互作用に起因していることに着目し、その熱電特性が最大で10倍程度、増強することを見出した(ChemPlusChem (2015))。 2.種々のカーボンナノチューブ-分子複合系において、優れた熱電特性が発現することを見出した(Chem. Sci. (2015))。とくに高分子電解質に孤立分散したカーボンナノチューブからは、150マイクロボルト/Kを超えるゼーベック係数を見出した(RSC Adv. (2016))。 3.クラウンエーテル誘導体をカーボンナノチューブに添加することで、高安定性n型材料が得られることを明らかにした。150℃、大気下において、1ヶ月程度顕著な劣化を示さないn型複合体を開発した(Adv. Funct. Mater. (2016))。種々の構造解析の結果、カチオン性のクラウンエーテルが緩やかに負に帯電したカーボンナノチューブ回りに配位し、静電的に安定化していることが示された。また、分光学的にも、安定なn型ドーピングが進行したことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した分子複合系における熱電特性の増強について、数多くの具体例を示すことができた。また、一部は当初の予測を超え、革新的な安定性を示すn型有機材料の開発につながる成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を通じて、従来不安定とされたナノカーボン中のカルボアニオン種が適切なカチオン種の存在下、大気下150℃程度まで安定であることが初めて分かった。この成果は材料応用の観点のみならず、有機化学における結合論からも大変興味深い。平成28年度には、安定なカルボアニオン種を有するナノカーボン(ナノカーバイド)の化学を開拓し、低分子化合物や従来な高分子材料では見出されない、導電性ナノカーボンゆえの結合論の開拓につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請課題において、従来不可能とされてきた超高性能、高耐久性の炭素系n型熱電材料を開発した。一方で、本研究で性能面は実証できたものの、その安定化メカニズムの証明は十分ではない。 また、当事業の研究成果のもと年度途中に関連する研究支援課題が採択され、より効率的かつ効果的に予算を活用するため、当事業の支出計画を見直した。当該課題の高い継続性と波及性、社会要請の観点から、今後の事業のさらなる拡大を見据え、残予算を平成28年度の物品購入に充てることが合理的と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記について、とくに電気化学的な手法を用いた電子状態解析が必須であると考え、平成27年度よりn型カーボンナノチューブ複合体の電位計測を開始した。平成28年度中には研究を引き続き進めるとともに成果をまとめて外部発表に繋げる。これらに係る諸経費を本予算から計上する。
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