平成27年度は、貴金属ナノ結晶の結晶面ごとにあらわれるアミン化合物の吸着特性の違いを利用して、異方形態金ナノ結晶の分離回収手法の確立を行った。異方形態金ナノ結晶には様々な形、結晶面を持つものが知られており、これらは構造ごとに光学特性や触媒特性が大きく変化する。本研究では、結晶作製における再現性が極めて高く、かつ露出する結晶面が確実に特定できる単結晶型の金ナノロッドを用いた。 セチルトリメチルアンモニウム塩(CTAB)を用いて調製された金ナノロッドは、側面に(100)面および(110)面を多くもつ。これらは、CTABのアミノ基および対イオンの吸着によるものとされるが、pH応答型両親媒性化合物C16CAで配位子交換を行っても、表面構造に変化は見られなかった。これは、CnCAがCTABと同じくアミノ基を持つこと、ならびに両者が類似構造を持つために混合吸着構造を経由しながら緩やかに置換が進行したためと考えられる。CnCAは、単成分系ではpH6以下でラメラ状の超分子体を形成するが、CTABとの混合系ではCTAB貫入による分子パッキングの乱れが発生して超分子体の形成が妨げられた。これは、過剰量のC16CAを加えることで克服された。 金ナノロッドはpH6以下で形成されるラメラ状超分子体に取り込まれ、分散液からろ別することが可能であった。ここで、金ナノロッドのアスペクト比を変化して、金結晶面の組成比とナノロッド回収効率を比較すると、(110)面および(100)面のより多い結晶形態のもので高い回収効率が確認された。これは、CnCA超分子体のアミノ基がこれら結晶面に高い親和性を示すためであると考える。この結果を利用することで、異方形態金結晶の結晶構造に基づいた回収を行うことが可能と言える。
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