研究課題/領域番号 |
26790022
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
熊谷 和博 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (20582042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 走査電子顕微鏡法 / 後方散乱電子 / 低エネルギー損失電子 / 電子分光 |
研究実績の概要 |
現在,走査型電子顕微鏡法(SEM)では信号電子のエネルギー弁別検出が注目されており,反射電子においても低エネルギー損失電子を選択的に検出することで,ナノ材料評価に有効な表面敏感,組成敏 感な像が得られる.しかし,像形成メカニズムの解明や検出エネルギーの最適化など未だ多くの課題が残されている.本研究では電子分光的アプローチを導入することで,放出電子スペクトルから像形成の解明を進めている.本年度は,典型試料を調製し,その低エネルギー損失電子像の像形成を調査した. シリコン基板上にLB法により配置したチタニアナノ薄膜をモデル試料として調製し,SEMによる像観察およびオージェ電子分校装置による放出電子スペクトル測定を行った.SEMでは後方散乱電子検出器のエネルギーフィルターにより検出エネルギー条件を変えながら像観察を行ったところ,低エネルギー損失電子を選択的に選択することで観察可能であるのに対して,いわゆる後方散乱電子を多く検出するような条件では薄膜の観察は困難となることがわかった.この後方散乱電子像の変化とオージェ電子分光装置により得られた放出電子スペクトルとを比較することで,像形成を議論した. 本試料においては薄膜がある部分と基板のみの部分とで,低エネルギー損失電子のうち特にプラズモンロスピーク付近のエネルギーをもつ電子の放出量に差が生じることで,後方散乱電子像に薄膜のコントラストが与えられていることがわかった.それ以下のエネルギーの後方散乱電子では強度差がなく,また弾性散乱電子の強度関係は後方散乱電子像とは反対であった.以上から,チタニア薄膜試料における像形成はプラズモンロスピーク付近の低エネルギー損失電子によるものであると理解された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき,典型試料を調製,その像観察とスペクトル測定を行った.H26年度はチタニア薄膜の低エネルギー損失電子像の像形成に関して議論を行い,像形成原理を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の二点に重点を置き研究を展開する. (1) 昨年度とは異なる典型試料のSEM観察,電子分光スペクトル観察. (2) 昨年度の成果を踏まえた後方散乱電子検出器の改造 以上の点から,低エネルギー損失電子によるイメージングの高度化を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度中の検出器改良を予定していたが,費用の面で折り合いがつかず改良を次年度に見送ったため,次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分と本年度使用額を合わせて装置改造に充て,研究を推進する.
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