研究課題/領域番号 |
26790023
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
斉藤 大志 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究員 (70611317)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一次元構造 / 金ナノワイヤ / 透過型電子顕微鏡 / 光散乱法 / みみず鎖構造 / 成長機構 |
研究実績の概要 |
本申請研究の目的は、光などの外部刺激によって金属ナノ構造体を接合し、高次な金属ナノ構造体を構築することである。本研究で合成する高次な金属ナノ構造体には、有機高分子の粘性と、金属の電気・熱伝導性を併せ持つ新奇機能の発現が予想される。本年度は、一次元ナノ構造体である金ナノワイヤに着目し、その合成と構造評価について検討した。金ナノワイヤの外部刺激への応答性を検討する上で、その正確な構造評価(長さや分岐)は重要な研究課題である。合成した金ナノワイヤの透過型電子顕微鏡(TEM)観察および静的光散乱(SLS)分析による構造解析を行った。その結果、金ナノワイヤは、反応時間と共に一軸成長し、その長さは最大で50マイクロメートルに達することが明らかになった。また、ナノワイヤは柔軟な"みみず鎖構造"を有していることが分かった。 これまで、金属ナノ構造体の構造(長さや分岐など)の評価は、電子顕微鏡によって限られた視野内にある一つ一つの粒子を観察する手法が主流であった。しかし、光散乱法を用いることで統計学的な平均値として構造情報を得られることが分かった。TEMにSLSを併用することで構造評価の簡便性・迅速性は飛躍的に向上した。金ナノワイヤの合成とその構造の評価法については成果物として既に発表しており、今年度も論文発表等の方法での周知に努める。今後の研究展開としては、ナノワイヤ成長過程の解明や、高い異方性構造を有する金ナノワイヤのマクロ物性の評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金ナノワイヤの合成とその評価法については既に確立しているため、合成したナノワイヤの構造については効率良く評価を進めることが可能である。ナノワイヤ成長過程の解析やマクロ物性の評価が次年度以降の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究では、「様々な形状のナノ構造体の合成と外部刺激による複合化・集積化」を重点課題に取り組む。課題を下記2つの小テーマに分割することで失敗のリスクを分散させ、迅速かつ確実に研究を遂行する。 ①金ナノワイヤ成長メカニズムの解析:金ナノワイヤの外部刺激への応答性を検討する上で、様々な形状(長さや分岐)のナノワイヤを合成することが重要である。H27年度では、ナノワイヤの成長メカニズムについて、成長モデルの観点から検討を進める。ナノワイヤの成長については、「Attachmentモデル」や「Seedモデル」が知られている。金ナノワイヤの成長メカニズムについて電子顕微鏡観察や光散乱法を用いた解析を行う。また、外部刺激(特に光)への応答性についても検討する。 ②ナノワイヤのインク化とマクロ物性評価:金ナノワイヤから成るインクの作製に取り組む。予備実験から、すでにナノワイヤを分散可能な溶剤は選定済みである。具体的には、金ナノワイヤのマクロ物性として、そのレオロジー特性に着目し評価を進めて行く。レオロジー特性の発現は、ワイヤ間の絡み合いに起因するものと考えられ、発現メカニズムの解明も進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の設備や実験器具を活用することで、当初計画よりも設備備品費、消耗品費(主にガラス器具)への支出が少額となったため。その他の消耗品(試薬、分析消耗品)や旅費については概ね計画通り支出した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分については、消耗品費(試薬・分析用消耗品)と旅費へ適切に配分して支出する。既に国際学会(GOLD2015、イギリス・カーディフ市)での発表が決定しているため、その参加費・旅費への支出が見込まれている。次年度以降も助成金の計画的な使用に努める。
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