従来とは桁違いの繰り返し寿命を持つ超高耐久化学センサチップの開発を目的とする。通常、一度開封されたバイオセンサはセンサ表面の汚染や試薬の酸化・腐敗等の影響により、長期間の繰り返し測定を行うのは難しい。特にウイルスのような微量の生体分子の検出にはELISA等、高感度の分析法が用いられるが、通常ELISA では1 測定ごとに抗体・基質など試薬を使い捨てる必要がある。つまり、一つのセンサでの連続測定は不可能である。そこで、本研究では個別に密閉封止された膨大な数の使い捨てのバイオセンサを一つのチップ上に集積化し、これらを一つずつ使いつぶしながら使用する超集積型高耐久化技術を提案する。各センサ内の試薬・溶液は密閉/真空チャンバー内に脱酸素状態であらかじめ個別に格納・保存され、使用時に一つずつ解放・再封止されていく。この技術により、1 チップでの長期間・連続な生物/化学物質モニタリングが可能となる。最終年度は前年度に確立した、様々な化学物質とセンサの長期保存を可能とする密閉封止マイクロチャンバー素子の動作安定性の向上及びアレイ化を行った。マトックス様の回路構成によって3行l2列、42個の独立したチャンバーアレイを構成し、本デバイスの大規模化の方法を示した。また、サーモグラフィ顕微鏡観察及び有限要素法シミュレーションを組み合わせることで、チャンバ動作に必要なマイクロヒータによる局所パルス加熱の影響(温度分布)を調べ、安定動作に最適な駆動条件を得た。このパルスを任意のアドレスの素子に印可し、任意のタイミングで複数種類の試薬を格納排出可能な自動コンピュータ制御システムを構築した。本システムで有機溶媒50%エタノール溶液(9 nL)の保存を行ったところ、10日間の保存での液量減少は1%以下で良好な保存性が示された。以上より”個別封止によるバイオセンサ長寿命化”の基礎技術を確立された。
|