研究実績の概要 |
本研究課題は,高分子ナノファイバーを基盤材料として用いた3次元光集積回路の要素技術の開発を目的としている.最終年度の平成27年度は,この要素技術の一つとして研究実施計画に挙げた導波路一体型高分子ナノファイバー電界発光源の開発を行った.はじめに,有機EL材料からなる高分子ナノファイバーの作製に成功した.具体的には,エレクトロスピニング法を用いてホール輸送性を示すポリビニルカルバゾール(PVK)と電子輸送性を示す2-(4-biphenylyl)-5-(4-tertButylphenyl)-1,3,4-oxadiazole (PBD)と緑色発光材料であるCoumarin 6 (C6)からなる混合ナノファイバー(平均直径:700 nm未満)の作製に世界で初めて成功した.PVKとPBDと材料の混合材料は,広く有機EL素子に用いられており,今後異なる発光材料を用いた多色化や高発光効率化への展開が期待され,広範な発展が予想される.次に,作製したPVK/PBD/C6ナノファイバーの光伝播損失を評価したところ,これまでに報告されている有機EL材料からなる高分子ナノファイバーの伝播損失の中で,最も低い損失で光が伝播することが明らかになった.最後に,電界発光に向けて同ファイバーへの異種対電極の形成法を確立した.ナノファイバーは極小の円筒構造であるため対電極の形成が難しいが,PVK/PBD/C6ナノファイバーと絶縁ポリマの相分離を利用することにより,ファイバー直径方向での異種対電極の形成に成功した.以上の成果は,導波路一体型高分子ナノファイバー電界発光源を実現する上で基盤となる成果であり,今後の同分野の発展に大いに寄与すると考える.
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