小型で,高い圧力を出力可能な電気浸透ポンプと,液体クロマトグラフィーの固定相の機能を持つポンプ集積型小型液体クロマトグラフの開発を目指し,電気浸透ポンプ内の構造体の形状と化学的性質がポンプの吐出圧に与える影響を評価した。 構造体の形状が吐出圧に与える影響の評価には,微細加工技術を用いて作製した四角柱(直方体型)の構造体を配列した微小流路を用いた。微小流路を電極と抵抗管に接続し,異なる長さの抵抗管における流量から,電気浸透ポンプの吐出圧を測定した。構造体の幅,長さ,間隔,配列方法を変化させたところ,中空流路内体積に対する構造体の体積(充填率)が大きいものほど高い吐出圧をもつことがわかった。電気浸透ポンプの駆動源が固液界面にあり,充填率が高い流路ほど固液界面の割合が大きくなるためである。その一方で,流路内の固液界面を同じに設計した流路でも,構造体の形状や間隔によって吐出圧が異なることがわかった。構造体周辺で電場強度が大きくなり,構造体のない構造体間隙において電場強度が小さくなることが原因と考えられる。これらの結果から,柵状の構造体が高い吐出圧を有することが予想されるが,構造体の形状および配置を最適化し,流れ方向の電場強度を高めることで,ポンプの性能の向上が期待できる。 構造体表面の化学的性質が吐出圧に与える影響の評価では,作製したシリカモノリス表面にスルホ基導入することで評価した。スルホ基導入することで,シリカモノリスのイオン交換能の向上と電気浸透流移動度の増大が確認された。また,ポンプとしての機能は,最大吐出流量の減少から,表面修飾時にモノリスのメソ孔サイズが変化していることが予想されるが,サイズ変化を考慮しても表面修飾による吐出圧の向上が確認された。今後,ポンプの機能を持つカラムによるオンサイト分析への応用が期待される。
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