研究課題/領域番号 |
26790044
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山根 啓輔 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80610815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GaN基板 / 非極性面 / 転位 / 反り |
研究実績の概要 |
申請課題に基づき、”次世代照明用 高効率白色LEDの研究開発”を目的とする全体構想の中で、非極性面GaNに注目し、高原料利用効率かつ低欠陥化可能な結晶成長法を見いだし、大面積非極性面GaN基板を実現することを目的として研究を行った。本年度は、非極性面の中でも発光特性に有利とされている{20-21}面および{20-2-1}面に着目し、転位・積層欠陥の解析および低転位化に取り組んだ。まず、サファイア加工基板上に{20-21}GaN厚膜を成長した。このとき、SiO2マスク層を中間層として設け、ヒロックおよびクラックの発生を抑制した。この厚膜から{20-21}GaN基板を作製し、{20-21}面および{20-2-1}面に再成長を行った。結果として、{20-2-1}面の方が成長速度が速く(原料利用効率が高く)、転位の低減率も高いという結果が得られた。{0001}面や、{11-22}面などの他の面方位上への一連の成長の結果から、成長速度は、最表面に形成する面が、Gaの時に高い事が明らかとなった。{20-21}基板に発生する欠陥には、サファイア加工基板側壁から発生するa+c転位、-c方向への成長領域で発生する積層欠陥が支配的であることが明らかになった。ただし、これらの欠陥は{20-2-1}面の再成長で低減しやすいという、非常に前向きな結果が得られた。この点については、今後メカニズムを明らかにしていく。 並行して、昨年度新たに提案した反りのメカニズムについて実験的証明に取り組み、極めて重要な追加データが得られた。具体的には、自立GaN基板の面内に伝搬する転位の透過型電子顕微鏡観察に成功し、提唱していたモデルに合致する転位の種類(半原子面を下方向にもつ刃状転位)であることが明らかになった。 得られた結果は、学会発表および論文執筆という形でまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低欠陥密度と高速成長(高原料効率)が両立できる面方位が見いだされつつある。また、GaN基板の反りの起源となる本質的なメカニズムを解明することができ、論文化した。この点に関しては当初の計画以上の知見が得られたといえる。また、当初の計画通り、他機関との連携を図り、欠陥の解析などを進めることができた。最終目標とする転位密度までは開きがあるため、今後転位の低減手法を構造解析と並行して検討する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き山口大学と連携してGaN基板中の貫通転位の低減手法について実験的・理論的検討を行う。昨年度検証したSiNマスクを用いた選択横方向成長したサンプルに関して、その透過型電子顕微鏡観察および斜め研磨したサンプルのカソードルミネッセンス観察を組み合わせて解析する。これにより、原子スケールから成長層厚スケール(数100μm)にわたり転位の低減機構を明らかにする。得られた知見を基にSiNマスク形成プロセスの最適化を行い、低転位GaN基板の実現を目指す。 昨年度明らかにした反りの起源については、追加データを含めて国際会議で発表し、積極絵的に情報発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金で金属Gaを購入する予定であったが、少量の購入では、送料などが割高になるため、次年度まとめて購入することとした。研究に関しては、中断することなく分析や解析に時間を当てた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り金属Gaの購入費用に充当する。
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