研究課題/領域番号 |
26790045
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉田 雅洋 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (80634500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面X線回折 / その場観察 / シリコンカーバイド / グラフェン / 結晶成長 / 放射光X線 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、放射光表面X線回折法(Grazing Incidence X-ray Diffraction : GIXD)を用いたSiC熱分解法による超高温グラフェン成長のその場観察法の確立であり、今年度得られた成果は以下の通りである。 多軸回折系に設置できる小型の超高温加熱炉において、非常に微小領域ではあるが、4H-SiC(0001)上に品質の良い1層グラフェンの成膜に成功した。また、成膜温度・焼成時間・Ar背圧を制御することで、1層から多層までのグラフェンの成膜にも成功した。 また、SPring-8のBL22XUにおいて、放射光GIXD実験を行った。基板であるSiC及びその上に成長したグラフェンは非常に軽元素であるため、散乱強度が非常に弱いと予想されたが、SiCに関しては非常に高強度の回折ピークを観測することができた。グラフェン及びそれに関連した構造に関するピークは観測されなかったが、十分に検出できる散乱強度で観測できることが予想された。また小型加熱炉を多軸回折系に設置し、1700℃の超高温域でのその場観察に成功した。その結果、シリコンの昇華温度(1200℃)以上で得たGIXDスペクトルにのみ、新たな回折ピークが出現した。加えて、 SiC由来の回折ピーク位置の温度変化から、SiCの熱膨張係数を求めた。これまで報告されている熱膨張係数は1000℃程度までであり、確立を目指しているその場観察法が超高温域での物性値を評価できる手法である可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、放射光X線を用いて、超高温域での表面X線回折実験を行えることができたため、本研究目的である手法開発の観点からするとほぼ達成できたと考えている。加えて、グラフェン成長のその場観察だけでなく、成長フロントであるSiC基板の未知の物性値を評価する手法へと発展させる可能性を得られた点は、計画時には予想していなかった成果であった。一方で、高温で現われたピークの起源やグラフェン由来のピークが未発見である点などが、重要な課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、確立した放射光表面X線回折法によるその場観察により、SiC熱分解表面及び界面構造を明らかにしていく。具体的には、まだ観測できていないグラフェン由来の回折ピークを見つけるとともに、高温域で現れたピークを精査し、その起源を明らかにする。加えて、SiC熱分解過程において、SiC及びグラフェンの回折ピークの時間変化を詳細に測定することで、表面・界面構造の変遷を明らかにする。さらに、成長条件依存性から高品質グラフェン作製の最適条件を見出す。これらの情報をフィードバックすることで、大型加熱炉でのデバイス応用に資する高品質な大面積グラフェンの作製に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
グラフェン成長のその場観察において、SPring-8などの放射光施設を利用した実験を行うことを計画していたが、今年度当初予定していた実験回数を経ることなく予想していた結果を得ることができたため、この実験のため計上していた支出が当初より少なく済んだため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費のうち物品費を使用して、加熱炉に使うハロゲンランプやガラスドーム、TaC製の試料台などの消耗品の購入に充てる予定である。一方、旅費については国際会議・国内学会への参加及び放射光施設での実験のために使用する。次年度使用額の20万円あまりについては、放射光施設使用料に充てる。
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