研究実績の概要 |
本研究は、次世代デバイス材料として期待されているグラフェンの成長法の中でも、高品質化が特に期待されているSiC熱分解法において、その成長過程での表面・界面構造をその場観察する手法を確立することを目的とした。その場観察法には放射光X線を用いた表面X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction : GIXD)を応用し、それに向けて開発していた小型加熱炉でのグラフェン成膜の条件出しを行った。SiC基板を対峙させるface-to-face法を適用することで安定した成長条件を、基板間距離と成長温度だけで制御できるようになった。 実際のGIXD実験では、初めに加熱炉を用いず多軸回折計のみで、SiC上にグラフェン成膜した基板に対して行った。加熱炉の入出射窓の制限の中でも任意の反射がある程度観測できるように、実験条件を最適化した。また、SiC, グラフェン及び界面buffer層に由来する反射をそれぞれ観測することができた。 次に加熱炉と多軸回折計を組み合わせて、GIXD法によるSiC熱分解過程における表面・界面構造の観測を行った。1 - 2分子層が成膜したSiC基板を用いて、buffer層由来の超格子反射ピークを標的にし、二次元検出器PILATUSを用いてその温度変化を観測した。その結果、熱膨張によるピークシフトは明らかに観測できた。またピーク強度やプロファイルにも不明瞭ながら変化が現れており、これまでの報告で提案されているSiC熱分解法によるグラフェン成長のSi面における成長モデルを定性的に支持すると考えている。 以上の成果から、放射光GIXD法を用いた超高温SiC熱分解法によるグラフェン成長のその場観察法の確立に成功し、その有用性を示した。今後SiC基板からグラフェン成長過程の構造変化を調べることで、詳細な成長プロセスの理解につながることが期待される。
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