研究課題/領域番号 |
26790051
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
相川 慎也 工学院大学, 付置研究所, 助教 (40637899)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子デバイス / ディスプレイ / 酸化物半導体 / 半導体物性 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
次世代の高精細大画面ディスプレイに搭載するスイッチング素子の候補材料として,酸化物半導体が注目されている.酸化物半導体は,非晶質構造にもかかわらず高特性を示し,低リーク電流が実現可能な特徴を有する.このため,従来材料の非晶質シリコンと比較して,素子の微細化が可能であり,機器の低消費電力化にメリットがある. これまでの研究では,新しい元素構成による酸化膜半導体材料を独自に開発し,高特性の薄膜トランジスタを実現してきた.成膜後に熱処理を行うことで特性が改善することが分かっている.しかしながら,熱処理による酸化還元反応とトランジスタの電気特性との相関関係の理解が不十分であった. 平成26年度は,熱処理による特性変化メカニズムの解明に先立ち,アモルファス酸化インジウム系半導体内のドーパント含有量の効果を検討した.熱処理によって酸素脱離が生じていると考えられることから,これを抑制するためドーパントとして酸素結合解離エネルギーの高いSiO2に着目し,酸化薄膜内への酸素保持を試みた. 結果として,SiO2含有量が増えるに従い,薄膜トランジスタのしきい値電圧が正方向にシフトし,10重量パーセントでは,成膜条件に無依存に0 Vに落ち着くことがわかった.酸素脱離により,酸化膜内のキャリア濃度が増加することから,この結果は,熱処理による酸素脱離を抑制できたことを示唆している.これは,大面積ウェハ上への特性バラつきの少ない薄膜トランジスタアレイの形成に有用である.SiO2含有量増加により電界効果移動度が低下してしまうが,一方で特性チューニングが可能な予備実験の結果も最近得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時からの所属機関の変更があったものの,前所属先と緊密に連携を図ることで,研究に遅れが生じないように実施したため.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実施状況から,研究計画達成のためには,酸化薄膜半導体内のドーパント濃度および薄膜の成膜条件が重要な役割を果たすことがわかってきた.スターティングマテリアルとして,酸素雰囲気に鈍感な材料を選定してやれば,後工程の熱処理条件は,薄膜トランジスタの特性に敏感に影響しない可能性がある.一方で,酸化薄膜半導体の高い性能を活かすためには,低濃度ドーパント系材料を用いて熱処理による特性チューニングが不可欠である.この点,申請書に記載した実施計画通りに研究は進展しており,当初の目論見通り,平成27年度も計画に準じて研究を実施していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
円安の影響により,購入を計画していた物品が予定よりも低価格で導入できたため,余剰が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
余剰分を繰越し,翌年度の研究をより進展させ社会に還元するために効率的に使用する.
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