研究課題/領域番号 |
26790056
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
砂田 哲 金沢大学, 機械工学系, 助教 (10463704)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 2次元微小共振器 / レーザーカオス / 物理乱数 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,2次元微小共振器を用いてサブミリサイズのレーザカオスデバイスを実現し,小型・高速物理乱数生成器への応用可能性を検証することである.平成26年度における研究実績の概要は以下のとおりである: 1.物理乱数の高速生成に適したカオス現象を発生させるサブミリサイズのデバイスを設計し,GaAs/AlGaAs屈折率分布型分離閉じ込め単一量子井戸構造のウェーハに作製した.このデバイスは擬似スタジアム型のレーザと環状型の2次元外部共振器から構成されており,全体の大きさは350μmx720μm以内である.環状2次元共振器部では,入力ポートから入射されるガウシアンビームを共振器内で周回させ,再びレーザ側へ戻すように設計されており,共振器径の約10倍の長さの光路を形成可能となる.本研究では,レーザと2次元共振器間の結合長を変化させた複数の素子を試作し,共振器中の光周回について調べた.その結果,光スペクトル及び遠視野像の解析を通じて,結合長が1μmの素子が最適であることが判明した.また,結合長が1μmの時に環状2次元共振器部からレーザへの戻り光の効果を確認することができた. 2. 次に,本デバイスからの出力光強度のダイナミクスを調べた結果,環状2次元共振器部への注入電流の増加に伴い,定常発振状態,リミットサイクル発振状態,そしてカオス的発振状態へ遷移することを明らかにした.特に,2次元微小共振器を発振させ,戻り光による不安定化だけでなくレーザ間の非線形結合の効果を合わせた場合に,帯域1GHz程度のカオス現象が発生することを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,当初の研究実施計画に従い,長光路を有する2次元微小共振器とレーザを結合したレーザカオス発生素子を設計・試作し,その基礎特性を評価した. その結果として,レーザ光が2次元微小共振器中を伝搬しレーザにうまく戻ることを光スペクトル解析等を通じて明らかにした.この結果は,カオス生成に必要となる戻り光の存在を示しただけでなく,微小領域中に効率的に長光路を形成できることを示した結果であるため,今後の研究に繋がる成果といえる.また,乱数生成に必要となるレーザカオス発生の駆動条件を調べた結果,2次元微小共振器を発振させ,戻り光による不安定化だけでなくレーザ間の非線形結合の効果を合わせたときに,最も広帯域なカオス信号を得ることができた.以上のとおり,次年度の研究実施計画に向けておおむね順調に研究を推進できた.しかし,本研究の目標を達成のためにカオス生成の発生に関する検討は引き続き必要と考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,前年度に引き続き,高品質な乱数生成に適したカオス信号を得るための条件について調べる予定である.具体的には,相関のない乱数を生成するために,カオス信号のサンプリングレートを自己相関関数を解析して決定する予定である.次に,本レーザ素子から出力されるカオス信号を光検出器で捉え,AD変換によりビット信号に変換し,排他的論理和をとることでランダムビット列を生成する.生成したランダムビット列の統計的性質は標準的な乱数の検定を行い,本素子における乱数生成速度を明らかにする.得られた結果を踏まえて,本研究課題である,2次元微小共振器を用いたレーザカオス素子の乱数生成応用の有効性を検討し,研究内容をまとめる予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,乱数生成の検討を行うための機器の購入にあてる計画であったが,その手配は可能となった.一方,複数の素子を効率的に詳細に評価することが必要となったため,観察系の改良に必要な治具及び光学部品・機器の購入にあてる予定である.
|
次年度使用額の使用計画 |
観察系の改良に必要な治具及び光学部品・機器の購入にあてる予定である.
|