本研究では,高速・小型物理乱数生成器への応用を目的として,2次元微小共振器を用いてサブミリサイズのレーザカオスデバイスを開発する.昨年度の主な成果は,微小領域に長い光路を形成可能な環状2次元共振器を設計・試作したこと,更に,その環状2次元共振器と疑似スタジアム型共振器を結合させたレーザデバイスを試作し,約1 GHzの帯域を有するカオス信号を得たことである. 今年度の主な成果は,上述のレーザカオスデバイスを用いて乱数生成実験に成功したことである.約0.78 GHzのサンプリングレートで取得したカオス信号をビット列に変換し,18種類の統計テストで構成されるDiehardテストを実施したところ,有意水準0.01で全てのテストに合格することを確認した.この結果は,2次元微小共振器レーザの乱数生成応用の可能性を示唆するものである. また,レーザカオスデバイスの更なる小型化を目的の一つとして,カオス信号を生成可能な2次元微小共振器の形状に関する条件も探索した.特に,カオス共振器と呼ばれる,光線カオスを示す共振器と非カオス的共振器の2種類を作製し,共振器の変形度,大きさ,注入電流値に対する依存性を系統的に調べた.その結果,カオス共振器では,共振器形状の詳細に依存せず,カオス信号を全く生成しない安定な単一モード発振が可能となることを明らかにした.一方,非カオス共振器では,カオス的出力の条件である多モード発振を示すことがわかった.これらの発振状態の違いは,共振器の共鳴モード間の結合の大きさに依存するモード競合現象に起因することも明らかにした.
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