本研究では、次世代の超高速な光通信や光計測の分野で有用となる、全ファイバー型で超高速な全光型の光サンプリング技術を開発することを目的とする。具体的には、パルス捕捉現象による非線形光ループミラー(NOLM)を用いた光サンプリング技術の開発を行った。 H26年度はまず、提案する光サンプリングに使用するNOLMや光源を構築した。数値解析より得られた結果をもとに、偏波保持型の光ファイバー素子を使用してサニャック干渉計を構築した。また、測定のために、波長の異なる2つの超短パルス光を生成し、これらを信号光および制御光として利用した。信号光と制御光の間のタイミングはミラー等の空間光学系を用いて調整した。 次に作成した実験系を用いて、提案するパルス捕捉現象によるNOLMを用いた全光型の光サンプリングの実証を行った。入力光として波長1610nmの制御パルス光と1560nm信号パルス光を用いて、NOLM出力端における信号光の光スペクトルを測定した。再構築した波形から入力波形が観測できた。また、出力パルスのスペクトルの中心波長は入力パルスの波長と一致した。 H27年度は、サンプリング計測の自動化を行った。ここでは、遅延線(ステージに固定したミラー)と測定器をコンピュータープログラムによって制御した。作成した遅延線により2パルス間に与えられる時間差は最少で6.7fsであった。数百fsのパルスを制御するため、十分な分解能を与えられると考えられる。自動計測を行うことで手動計測時に比べてより正確に等間隔にサンプリングでき、8.6psの信号光の波形の再構築に成功した。以上の結果より、本研究で提案したパルス捕捉現象による非線形光ループミラーを用いた、時間幅の広いパルス光からフェムト秒領域の光を抜き出す、光サンプリング技術を実現できたと考えられる。
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