研究課題/領域番号 |
26790062
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浅井 栄大 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (00722290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 量子光学 / 超伝導 / 国際情報交換(イギリス、ドイツ) |
研究実績の概要 |
本年度は固有接合量子メタマテリアルの電磁場応答理論の構築に向けて、超伝導量子ビットを人工原子とした一次元超伝導量子メタマテリアルの電磁場応答理論を構築した。まずは量子ビット間に直接的な相互作用の無い一次元量子メタマテリアルを想定し、その電磁場応答特性を数値シミュレーションにより調べた。その結果、直接相互作用のない量子メタマテリアルにおいても、人工原子である量子ビットが電磁場を介して結合し、量子メタマテリアル全体として特異な電磁場応答を示す事が明らかになった。 まず、量子メタマテリアル内を伝搬する電磁場パルスに対しては集団的な誘導放出を起こし、パルス強度を大きく増強する事が明らかになった。また、超伝導量子ビットの示す非線形性に由来する量子ビットのカオス的ダイナミクスや高調波発生、パラメトリック増幅現象等も現れる事がわかった。 さらに、静磁場下においては量子ビットが静磁場を介して結合し、超伝導量子メタマテリアルが全体として一つの超伝導体のように振る舞う事が明らかになった。その際、量子メタマテリアル内部には特殊な量子渦糸が発生し、従来の超伝導体とは大きく異なる磁場ー磁束密度曲線を示す事が明らかになった。 本年度は量子メタマテリアルの示す新奇な電磁場応答特性を明らかにした。この成果は新たな光学デバイス応用の研究を推進する重要な成果である。また、本研究で明らかになった量子メタマテリアル内における量子ビットの集団運動やカオス的ダイナミクスは、量子基礎科学や非線形物理学の分野において大変意義深い知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は固有接合量子メタマテリアルの理論構築の基礎となる、一次元の超伝導量子メタマテリアルの理論構築を行う事ができた。また、その量子メタマテリアルの示す新奇な電磁場応答特性を明らかにした。その成果は高く評価され、三つの国際会議において招待講演を行った。本年度の目標はおおむね達成されており、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度はまず、26年度に構築した理論を基に固有接合量子メタマテリアルの電磁場応答の理論を構築し、電磁場応答を数値シミュレーションにより調べる。特に、固有接合量子メタマテリアルにおける量子ビット間のもつれ状態が光子の量子状態に与える影響について詳細に調べる。また、固有接合量子メタマテリアルにおける量子ビット間の直接的な電磁気学的結合が、電磁場応答や量子ビット間の同期現象に与える影響について明らかにしていく。 28年度は27年度の研究成果をふまえ、固有接合量子メタマテリアルの特性を活かした新しい電磁波制御デバイスを提案し、その動作特性を調べる。またその際、独Karlsruhe 大や筑波大の実験グループとも議論し、より現実的なデバイス構造の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度購入予定であった参考図書の一部が絶版、及び取り寄せに時間がかかる事が判明したため、 今年度の購入を断念した。そのため26年度の助成金が余り、次年度に繰り越される事となった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越される21998円は、昨年度本来購入予定であった図書の購入にあてる。
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