本研究課題では、高温超伝導体固有ジョセフソン接合(IJJ)からなる量子メタマテリアル「固有接合量子メタマテリアル(IJJQM)」の電磁場応答特性を理論的に明らかにし、その特性を活かした新奇な電磁波制御デバイスの提案を目指した。 26年度及び27年度は、IJJQMの電磁場応答理論の構築に向けて、そのトイモデルとなる一次元量子メタマテリアルの電磁場応答理論を構築し、その電磁場応答特性を数値シミュレーションにより調べた。その結果、量子メタマテリアル内を伝搬する電磁場パルスに対して集団的な誘導放出を起こし、パルス強度を大きく増強する事が明らかになった。また、超伝導量子ビットの示す非線形性に由来する量子ビットのカオス的ダイナミクスや高調波発生、パラメトリック増幅現象なども現れる事がわかった。さらに、静磁場下においては量子ビットが静磁場を介して結合し、超伝導量子メタマテリアルが全体として一つの超伝導のように振る舞う事をわかった。その際、量子メタマテリアル内部には特殊な量子渦糸が発生し、従来の超伝導体とは大きく異なる磁場―磁束密度曲線を示す事が明らかになった。 最終年度では、IJJQMMの古典的状態を記述する固有接合モデルを構築し、その電磁気学的特性を数値シミュレーションにより調べた。その結果、固有接合からのTHz 電磁波放射の偏光状態が、局所加熱によって大きく変化する事がわかった。この事から、固有接合を用いたデバイスの電磁場応答が、外部からの局所加熱によって自在に制御可能である事が明らかになった。 以上の研究成果により、固有接合量子メタマテリアルの基盤理論を構築できた。また、これらの成果は今後の光学デバイス応用の研究のみならず、量子基礎科学の分野においても重要な知見であると考えられる
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