研究課題/領域番号 |
26790063
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
牧野 孝太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 産総研特別研究員 (30727764)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ/赤外材料・素子 |
研究実績の概要 |
平成26年度には超格子GST膜を用いた可視光、近赤外線およびTHz波の検出システムを構築し、検出器としての可能性を実験的に示した。 光照射時により生じるサンプル間の抵抗変化を印加電圧の変化として検出するフォトコンダクティブ回路を作製し、アンプシステムにより増幅した信号をオシロスコープにより時間分解測定するシステムを構築した。サンプルには高抵抗Si 基板上にスパッタリング装置により堆積させた超格子GST薄膜を用いた。 まず、光学チョッパーにより変調させた白色LEDをサンプルに照射し、光照射によって抵抗変化が生じること観測した。これにより超格子GSTの光検出器としての応答とともに構築したシステムが適切に動作するかを確認した。次に、通信波長帯(1.55 μm)の近赤外レーザーダイオードをパルス発信させ、光源として用いて測定を行った。その結果、近赤外線を検出可能であることを確かめた。この際、アンプシステムに組み込まれたノイズ除去用のフィルタが信号の増幅を抑制していることが明らかとなったため、今後改良が必要であることが明らかとなった。 さらに、高強度THz 波を照射した際の計測を行った。THz波の発生には非線形光学結晶とフェムト秒パルスレーザーを用い、フェムト秒光パルスを照射した際に光整流によって発生する高強度THz 波パルスをサンプルに照射し、抵抗変化測定を行った。その結果、パルス照射直後に抵抗値が速いタイムスケールで減衰し、緩和する過程を観測することに成功した。このように、超格子GSTによる赤外線・THz波検出に成功している。 また、超高速光応答ダイナミクスの観測を目的としたコヒーレントフォノン分光測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作成したデバイスのセルサイズなどが小さすぎたことが原因で、検出器としての感度などの基本的な評価が実施できていない。また、ノイズ対策が不十分であるため、信号が適切に増幅できていない場合や、ノイズが除去しきれていない場合があり、計測システムの見直しが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には前年度の結果を基に、まずは感度や応答速度などの検出器としての基本的な性能や、印加する電圧やセルサイズが与える影響を評価する予定である。 さらに、アレイ状にセルを配置して、イメージングデバイスの試作を行う。超格子構造や受光面のサイズ・ピッチの異なる複数の試作デバイスを作製し、比較を行う。特に、最近になって超格子構造がトポロジカル性に大きな影響を与えることが明らかとなってきたため、適切な超格子構造の同定が求められる。その後、作製したデバイスを使用して実際にイメージング測定を行う計画である。 さらに、デバイス面に対して様々な角度で円偏光パルスを照射した際に生じるスピン偏極電流 の検出や、磁場を印加した際の応答の変化を計測し、スピントロニクス材料として可能性を検証 することも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
THz時間領域測定装置の導入が計画より遅れたため、購入予定であった光学部品などの購入を遅らせたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
THz時間領域測定装置が納入された際に必要とされる光学系・光学部品及び関連する物品を購入する計画である。
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