研究課題/領域番号 |
26790064
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
涌波 光喜 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波応用総合研究室, 研究員 (70726140)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホログラフィ / ホログラムプリンタ / 計算機合成ホログラム / ホログラフィック光学素子 |
研究実績の概要 |
本研究では,奥行き数メートルを持つ計算機上の立体モデルを静止画として像再生可能な大型ホログラム記録技術の実現を目指している.主な研究内容は,1.光波の記録技術の確立,2.光波の計算技術の確立,3.全自動でホログラムを記録する光学系の開発である.H28年度は,上記の課題を並列的に進め,以下の成果を得た. 1)波面のフルカラー記録が可能な光学系を開発し,原理検証によってRGBそれぞれの波長による光学再生を得た. 2)775億画素を超える光線情報から同画素数を持つホログラムデータを200~300並列で計算できる環境を構築した. 3)目標サイズの印刷が可能な全自動ホログラムプリンタを構築した. 特に,本研究課題は申請時には単色のみのホログラム記録再生を想定していたが,フルカラーの記録技術は実用化を目指す上で重要な課題であることから1)にあるフルカラー記録の検討を開始したことは想定以上の進捗を得ているといえる.また,本年度はこのホログラム記録技術によって立体モデルの出力だけでなく,所望の反射特性をもつ光学素子が作製できることにも着目し,凹型ミラーアレイや非球面ミラーと同等の光学機能を持つホログラフィック光学素子(HOE)の試作も行った.これらHOEの作製を通して記録再生される光波の精度検証も開始しており,立体モデルの更なる高精細な像再生につながると考えている.本研究に関する成果は査読付き論文1件,国際会議/国内学会6件(うち招待講演5件)などにおいて発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度に計画していた目標は,1)目標サイズの印刷が可能なホログラム自動プリンタの開発,2)目標サイズのホログラムデータ計算が可能な計算環境の構築,の2点であった.この2点についてはH28年度中に達成したことから,進捗状況は概ね順調であるといえる.一方,計画に含まれていなかったフルカラー印刷に関する原理検証を同時に進め,RGB各波長によるホログラム再生を確認したことから,計画以上の進展を得たと言える.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は,目標サイズのホログラムをホログラムプリンタで記録・再生することで,本研究課題の最終目標の達成を図る.既に目標サイズを全自動で記録可能なホログラムプリンタが構築済みであり,また目標サイズのホログラム記録に必要なホログラムデータの計算環境も構築できている.一方,本研究課題申請時には問題視していなかったホログラムの照明環境の良し悪しが再生像の画質に大きな影響をおよぼすことが判明した.この再生像の画質は再生像の奥行きの上限を決めるため,照明環境に寄る画質の劣化を抑える必要がある.よってH29年度は,まず照明環境による像劣化のモデルを数式化し,それに応じて光源に要求される線幅や許容できる光源の空間的な広がりといった照明環境の仕様を選定する.この仕様を満たす照明環境を構築することで,目標達成に必要な再生像の画質を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ホログラム印刷における波面の高精度化に必要な光学素子が,前年度の使用額では購入金額に満たないことがわかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の未使用額と今年度の使用可能額を合算して,ホログラム印刷における波面の高精度化に必要なヘッド用の光学素子類の購入に当てます.
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