研究実績の概要 |
平成26年度は実験と装置改良,およびコンピュータシミュレーションの改良を行なった。 イオンビーム散乱実験では, 超高真空散乱槽内に取付けたアルカリハライド結晶KBr(001)表面に十分にコリメートした約0.55MeVの陽子を表面すれすれの角度で,表面面チャネリングの条件で入射し,散乱強度分布の測定を行った。これらの測定の間に数回,表面に電子線照射を行い結晶表面に欠陥を生成し,欠陥により生じた散乱陽子の強度分布の変化を調べた。散乱強度は表面の凹凸の変化に応じて変化し,一層脱離するごとに振動するため,この強度振動から表面ステップの密度と層状剥離の周期の導出を行った。電子線照射時の結晶温度を変えて測定を行い,散乱強度振動の周期が結晶温度によって変化することを確認した。 散乱強度分布の測定は,結晶の下流側に蛍光板を設置し散乱陽子のパターンを一般的なデジタルカメラで撮影し,画像データを散乱強度分布に変換して行っているが,より精度よく測定するために,マイクロチャネルプレートを用いた検出システムに変更することを予定しており,このシステムを導入するための準備を行った。また,入射陽子のエネルギーを低くすると,表面チャネリングの臨界角が大きくなるため,入射角を大きくすることができ,散乱強度分布をより詳細に調べることができると期待されるため,別の実験で使用していたkeV領域のイオンビーム発生装置を改良を行った。 計算機シミュレーションではステップ部で散乱するイオンの軌道計算を行ってきた。26年度は結晶温度に依存した表面形状の変化を導入し,軌道計算を開始した。
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