研究課題/領域番号 |
26790071
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
川崎 卓郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究員 (20626361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中性子回折 / 圧電材料 / その場測定 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、データ処理ソフトウェアの改造、およびこのソフトによって抽出した中性子回折強度データの解析、電場下での単結晶圧電材料の中性子回折実験を実施した。 サイン波のような周期的電場を印加した状態で測定された中性子回折データを電場の情報に基づき分割する場合、電場の大きさだけでなく、位相を考慮する必要がある。つまり、電場が上昇する過程と下降する過程には同じ大きさとなるタイミングがあるので、これらを別々の状態として識別する必要がある。そこで、波状の印加電場と位相を合わせた矩形波(ON/OFF信号)を同時に測定し、この信号に基づいて電場の位相を識別できるように測定システムとデータ処理ソフトウェアを更新した。複数の波形を互いに参照してデータを識別することで、単純な波形だけでなく、実際にデバイスを駆動するために使われるような複雑な波形へも対応が可能となった。 また、代表的な単結晶圧電材料であるPMN-PTおよびBaTiO3単結晶を用いた電場下でのその場中性子回折実験を行い、印加電場の大きさによる格子ひずみとドメイン状態の変化の観察を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施したデータ処理ソフトウェアの改造と、電場下単結晶その場中性子回折実験のためのシステム構築によって、本研究において計画していた技術開発はほぼ完了した。前年度測定した市販の圧電素子を試料として測定したデータを改造版ソフトウェアを用いて解析した結果に関しては、論文としてまとめる予定である。また、ここで構築した測定システムを用いて2種類の代表的な単結晶圧電材料評価のための実験を実施し、現在解析を進めている。J-PARC中性子源のトラブル等によってマシンタイムが十分に確保できず、セラミックス材料の評価のための実験は遅れているが、すでに施設は稼働を再開しているので、遠からず実施できる見込みである。実験や解析のための技術的な課題は解決されているので、マシンタイムを確保でき次第、速やかな実施が可能である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、これまでに得られた結果を論文として発表するとともに、確立した手法を適用して種々の圧電材料評価のための実験を実施する。まずは測定および解析が完了している市販圧電素子の実験に関する結果を技術的な内容も含めて論文としてまとめる。単結晶圧電材料に関する実験データの解析を進めるとともに、同様の手法を用いて非鉛系単結晶圧電材料(LiNbO3, LiTaO3等)の評価実験を実施する。セラミックス材料については、特性の異なる複数のPZT系材料の比較実験、および高温・低温環境での電場下中性子回折実験を実施する。動力機関等の近傍で用いられる圧電素子は排熱にさらされる可能性があり高温環境での評価は重要であるため、優先して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中性子データの記録と連動して外場情報のアナログ信号をイベントデータとして記録すためのTrigNETと呼ばれるモジュールを本研究専用に購入する予定であったが、計測機器開発を行うグループが予備として購入したものを使用できることが判明したため購入を見送った結果、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
より多くの材料を多様な環境で評価し比較するための試料の購入費用に充てる予定である。各種セラミックスや単結晶、並びに実用機器評価用試料として金属ケース付き圧電素子を購入する。また、リファレンスとなる粉末試料等を保持するために用いる試料ホルダーや、電極部品などの消耗品の購入費用にも充てる予定である。
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