平成28年度は、これまでに整備した電場印加システムとデータ処理ソフトを用いて、前年度までに実施した測定よりも高い周波数の電場で駆動する積層圧電素子のストロボスコピック中性子回折測定、およびPZTセラミックスの分極過程のその場中性子回折測定を実施した。 積層素子の測定で用いた電場は24Hzであるが、J-PARC物質・生命科学実験施設では25Hzで中性子が発生される。この実験によって、本研究で確立した手法を用いれば中性子の発生と同程度の周波数で繰り返し変化する外場下においても、任意の区間を切り出し同位相の部分を足し合わせることで、格子ひずみやドメイン配向などの材料特性を評価可能なことが実証できた。 PZTセラミックスの分極過程の測定では、両面に電極を整形したPZTセラミックス板試料に対して、電場を0V/mmから+2kV/mmまで印加し、その後-2kV/mmまで変化させ、さらに+2kV/mmへと変化させた。初期の電圧上昇過程では、ドメイン配向、格子ひずみ共にPZTの抗電界とされる600V/mm付近から急速に変化した。中性子回折データから見積もられた変形量はマクロな変形量とも良い相関を示し、直接測ることが難しい、デバイス等の内部に組み込まれた圧電材料の変形を中性子回折法によって評価できる可能性が示された。 期間全体全体を通じ、本研究ではこれまで中性子回折の対象とすることが難しかった速さで変化する外場下での物質構造の挙動を評価する手法を確立し、圧電材料研究へと適用した。この手法は、より実用に近い条件下での材料評価を可能とし、構造材料の疲労特性やイオン伝導体等、様々な物質・材料の研究へ広く適用することができる。
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