本年度の研究では理研RIビームファクトリーに既存の循環型Heストリッパーと、これまで開発を進めてきた真空紫外分光・計数システムを接続するための差動排気系を増強・コンパクト化するための研究を進めた。昨年度までに、Heストリッパーに照射するウランビームに起因する真空紫外光以外のバックグラウンドイベントが適切な時間ゲートをかける事で、問題にならないレベルまで除去できる事が分かり、シグナル検出効率改善のために真空紫外光検出器(Csコーティングチャネルトロン)をより近づけられる事が分かった。一方で十分に短い距離でHeストリッパーの動作圧力である7kPaから、真空紫外光検出器の動作可能な真空領域(~10-4 Pa)に接続するためには差動排気系を増強し、コンパクト化することが必要不可欠であった。大型のポンプを使用し、排気能力を増やす事は可能であるが、一般的に大型のポンプの口径はコンダクタンスを稼ぐために大きな直径を持つ。その様なポンプを並べた場合、結局ストリッパーと検出器の間の距離は長くなってしまうため、新しい差動排気方式が必要であった。そこで大型のポンプを必要とせず差動排気能力を改善する流体力学を駆使した新方式を提案し、流体計算を進めた。実際に新方式を用いた差動排気系のプロトタイプを作成しその有用性を確かめた。 更に新手法の最適化と性能改善を進めるため、オフラインでの差動排気系テストベンチシステムの構築のための準備を進めた。
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