フェリ磁性薄膜GdFeCoに一定の条件でパルスレーザーを印加した際に観測される巨大なスピン波の制御性を高めるための研究を推進した。レーザーパルスの制御性を高めるため、観測装置である光電子顕微鏡装置へ導かれるレーザー光の安定化に係る作業を進め、ビームの発散を従来の3cm径から1cm径まで抑えることができた。また、電気的高周波での(レーザーを用いない)巨大スピン波の発生とその時間分解観察を目標とし、観察装置内の試料にGHz級のマイクロ波を導入できる機構の開発を進めた。装置の真空度や、周囲の高圧源などスペースの制約がある中で、最高で5GHzのマイクロ波を低損失で導入できるコンパクトな真空対応試料ホルダを開発した。現状では性能の実証にとどまっているが、今後、大型予算の獲得により、放射光パルスと同期できる特殊な高周波電源システムをはじめとした周辺装置の整備を進め、実運用できる形にしていきたい。また、本課題の契機となった巨大スピン波現象について、これまで原著論文を投稿していたものの、起源に対する理論考察が不十分で受理されていなかった。その後、過去の関連研究からの考察により、本現象が、スピンが引き起こす波(マグノン)と音波(フォノン)が結合するという仮説を導入すると現象が整合性よく説明できることが分かったため、理論研究グループの協力を得ながら論文原稿の内容を大幅に改訂し、Phys. Rev. Lett.誌へ投稿した(H27年11月)。現在、一度目の改訂を経て、査読結果を待っている状態である。
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