高分子液体の熱潤滑に対する新しいマルチスケールシミュレーション,Synchronized Molecular-Dynamics(SMD)法を開発した.SMD法では,巨視的な熱・運動量の輸送方程式を満足するように同期された複数の分子動力学(MD)セルが,複雑流体の局所的な流体要素における発熱,応力,内部構造を計算する.MD法では扱うことが困難な巨視的なスケールでの複雑流体の挙動を任意の分子モデルに基づき計算することができる点が大きな特徴である.この方法を用いて,巨視的なスケールでの高分子液体の熱潤滑を解析し,流動と発熱の競合によって高分子の構造変化に新しい転移現象が起こることを明らかにした.
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