研究課題/領域番号 |
26790083
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
永井 哲郎 立命館大学, 生命科学部, 助教 (90706566)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、生体分子のシミュレーションにとって重要なレプリカ交換分子動力学(replica-exchange molecular dynamics: REMD)法、並びに、焼き戻し法(Simulated Temperin: ST)に関するパラメータの最適化について調べている。 2014年度は、質量に着目し研究を遂行した。レプリカ交換分子動力学法のようなシミュレーションでは、対象とする系を本来調べたい温度より高い温度でも分子動力学シミュレーションを実行する必要がある。しかしながら、温度の高いところでは、粒子の速度が大きくなり、分子動力学シミュレーションは不安定となり、シミュレーションが途中で失敗してしまうことがある。この問題点を払拭する方法として、温度に合わせて質量を適切にスケールすることを提案し、具体的な数値実験による検証も行った。またこの方法により、レプリカ交換分子動力学シミュレーションのアルゴリズムが簡単となる場合があることを併せて指摘した。さらに、レプリカ交換分子動力学シミュレーションにおいて、質量を任意にスケールした際に必要となる補正についても理論的な検討を行い発表した。過去に提案された手法に原理的な間違いがあることも同時に指摘し、改善策を提案した。これに関する具体的な数値計算による確認は今後の課題である。 本研究を通じて、世界で広く使われている分子動力学シミュレーションシミュレーションソフトの一つである、GROMACSというソフトウェアパッケージで、ある条件下でレプリカ交換分子動力学シミュレーションを行うとバグが発生することを発見し修正を提案することも出来た。(http://redmine.gromacs.org/issues/1362)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、まず交換頻度とレプリカ数に着目する予定であったが、質量に着目したことで、一定の進捗が得られ、過去に提案された手法に存在する理論的な間違いについても指摘することが出来た。当初計画における対象であった交換頻度とレプリカ数に対してもいくつかの予備実験による結果を得ることが出来ている。 また、論文等に直接結び付くわけではないが、広く使われているソフトウェアに存在するバグを指摘できたことは、当該分野の多くのユーザに対するメリットがあったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、まず交換頻度とレプリカ数に着目する予定であったが、質量に関する最適化で進捗が得られたので、2015年度も質量に関する最適化を当面すすめる。特に、レプリカ交換分子動力学シミュレーション法で有用であった方法が焼き戻し法でも有用であるかを確かめる。研究実績の概要で述べたように、過去に提案された手法において、原理的な間違いがあることを理論的に検討したので、その数値実験による確認も合わせて行う。 また、当初の計画であった交換頻度とレプリカ数に関しても予備実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画と異なる部分に注目したため、2014年度に当初必要とした計算資源を必要としなくなったため、計算機の購入を一時見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2014年度の繰り越し分と合わせて計算機クラスタを購入し、研究をより効率的に進める。 また、欧米の優れた研究者と会い議論するための旅費として活用する。
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