本研究では、生体分子のシミュレーションにとって重要なレプリカ交換分子動力学法(replica-exchange molecular dynamics: REMD)及び、焼き戻し法(simulated tempering: ST)に関するパラメータの最適な選択法について研究を行っている。2016年度は、2015年度より引き続き、焼き戻し法によるシミュレーションの改良を行ってきた。焼き戻し法とレプリカ交換分子動力学法の間には、幾つかの共通点があるが、焼き戻し法には一度に大量のCPUを使う必要がないという利点が有り、レプリカ交換分子動力学法と同様に重要な手法である。 焼き戻し法ではレプリカ交換分子動力学法と同様に、実際に調べたい温度よりも高い温度で分子動力学シミュレーションを行う必要がある。このような高温の分子動力学シミュレーションでは原子や分子の衝突がより高いエネルギーで生じ、分子動力学シミュレーションが不安定となることが懸念される。この問題点を払拭する手法として、焼き戻し法においても質量のスケールが有用であることを示し、また、本手法により焼き戻し法のアルゴリズムがより簡便できることを示した。さらに、提案した手法をタンパク質の折りたたみシミュレーションに応用し、本手法が有望であることを示し、論文として出版された。 さらに、レプリカ交換分子動力学法において、より一般的な質量のスケールを行うための定式化を完成させた。本定式化を利用して、先行研究をより精度の良い手法にする提案を行っている。
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